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領(れう)し栄曜(ゑいよう)歓楽(くわんらく)を心の儘(まゝ)【侭は略字】にし。子孫(しそん)の後栄(こうゑい)を計(はか)らんものと。天の照覧(せうらん)を不顧(かへりみず)し
て。密(みつ)〱(〳〵)に近国(きんごく)の武士(ぶし)に院宣(いんぜん)を伝(つた)へ上皇の御 味方(みかた)に招(まね)きけるぞ愚(おろか)なる。それ隠(かくれ)
たるより顕(あらは)なるはなしとの諺(ことはざ)宜(むべ)なるかな。上皇(じやうかう)御 隠謀(いんばう)の密事(みつじ)誰(たれ)か洩(もら)しけん。早(はや)
くも平安城(へいあんじやう)の帝厥(ていけつ)へ聞(きこ)えければ。帝(みかど)大いに駭(おどろ)かせ給ひ。急(いそ)ぎ坂上田村丸(さかのうへたむらまる)を召(めさ)れ。火(くわ)
急(きう)に平城(なら)の旧都(きうと)へ馳向(はせむか)ひ。上皇(じやうかう)に御 謀叛(むほん)を勧(すゝ)め申せし奸徒(かんと)を。悉(こと〴〵)く搦捕(からめとつ)て立(たち)
皈(かへ)るべしと詔命(みことのり)ありけるにぞ。田村丸(たむらまる)領掌(れうぜう)し。参議(さんぎ)文屋綿丸(ぶんやのわたまる)を副将(ふくせう)とし宦兵(くわんへい)
二千 余騎(よき)を引率(いんぞつ)し都(みやこ)を発足(ほつそく)せられけり。帝(みかど)は上皇(じやうかう)に弓(ゆみ)彎(ひき)奉らん事を歎(なげ)かはし
く思召(おぼしめし)。去年(きよねん)唐(とう)より帰朝(きてう)せし釈空海(しやくのくうかい)は二なき御 皈依僧(きえそう)なれば。空海(くうかい)を召(めさ)れて
今度(こんど)の擾乱(じやうらん)速(すみやか)に平定(へいでう)すべきため。東寺(とうじ)に八 幡宮(まんぐう)の社檀(しやだん)を建(たて)捆(ねんごろ)【裍は捆の譌字】に祈(いの)り奉る
べしと命(めい)じ給ひければ。空海(くうかい)勅命(ちよくめい)を奉(うけたまは)り即(すなは)ち東寺(とうじ)に社殿(しやでん)を建(たて)八 幡宮(まんぐう)を勧(くわん)
請(ぜう)し朝敵(てうてき)降伏(がうぶく)の秘法(ひほふ)をぞ修(しゆ)せられける。今の東寺(とうじ)の八幡宮(はちまんぐう)是(これ)なり。去程(さるほど)に