Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 231

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肩(かた)にかゝり。身(み)に着(き)たる藤(ふぢ)の衣(ころも)は破(やぶ)れて。膝(ひざ)も見(あらは)なり。時(とき)に童子(どうじ)空海和尚(くうかいおしやう)に向(むか) ひ師兄(しひん)【「すひん」とあるところ】は倭国(わこく)の五 筆和尚(ひつおしやう)にて在(ましま)すかと問(とふ)。師(し)しかりと答(こたへ)られければ。童子(どうじ)が曰(いはく) 然(しか)らば此(この)流(ながる)る水(みづ)の面(おも)に字(じ)を書(かき)て見せ給へとて何所(いづこ)よりか筆(ふで)硯(すゞり)をとり来(きた)りて和(お) 尚(しやう)の前(まへ)にさし置(おき)けり。空海師(くうかいし)いと安(やす)き義(ぎ)なりとて。筆(ふで)を執(とり)水面(すいめん)に清水(せいすい)を讃(ほむ)る 詩(し)を書(かゝ)れけるに。文点(ぶんてん)少(すこし)も乱(みだれ)ず鮮(あざやか)に文字(もんじ)浮(うか)みて流(なが)れ下(くだ)りけるにぞ。童子(どうじ)は 屢(しば〳〵)感賞(かんせう)し。師(し)に作(なら)【做は作の俗字】ひて我(われ)も一 字(じ)を書(かき)て試(こゝろみ)候べしと。筆(ふで)を執(とつ)て同(おな)じく水面(すいめん)に草(さう) 書(しよ)の龍(りよう)といふ字(じ)を書(かき)けるに。是(これ)も水(みづ)に浮(うか)みて筆勢(ひつせい)みだれず又 流(なが)るゝ事なし。然(しかる) に龍(りよう)の字(じ)に右の点(てん)をうたざりければ。空海師(くうかいし)童子(どうじ)に向(むか)ひ何(なに)ゆへ小点(せうてん)をうたざるや と問(とは)れけるに。童子(どうじ)完示(くわんじ)として。実(げに)忘(わす)れ候ひしと言(いひ)さま。筆(ふで)を執(とつ)て点(てん)をうつとひとしく 忽(たちま)ち山河(さんか)鳴動(めいどう)し。水面(すいめん)の龍(りよう)の字(じ)は真(まこと)の龍(りよう)と変(へん)じ光(ひかり)を放(はな)ち鱗角(りんかく)を鳴(なら)し雲(くも)を 呼起(よびおこ)して虚空(こくう)へ飛昇(とびのぼ)りけり。其時(そのとき)童子(どうじ)も身(み)を躍(おどら)して龍(りよう)の背(せ)に乗(のり)うつるよと見(みへ)