Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 250

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再会(さいくわい)を約(やく)して別去(わかれさり)けり。空海師(くうかいし)はそれより二 疋(ひき)の狗(いぬ)を先(さき)に立(たて)て犬(いぬ)の生方(ゆくかた)へ歩往(あゆみゆき)給ふ に両狗(ふたつのいぬ)は野(の)を過(すぎ)里(さと)を越(こえ)山を分(わけ)渓(たに)を廻(めぐ)り遂(つひ)に一 座(ざ)の高山(かうざん)へ登(のほ)り平 原(げん)の地(ち)に脚(あし)を 止(とゞ)めけり。空海師(くうかいし)犬(いぬ)の挙動(ふるまひ)を感(かん)じ給ひ実(げに)も猟男(さつを)の言(いひ)し如(ごと)く。畜生(ちくせう)ながら山路(やまぢ)に 馴(なれ)てかゝる高山(かうざん)の路(みち)をよく知(しり)けるぞ殊勝(しゆしやう)なれとて。二 疋(ひき)の犬(いぬ)を賞(せう)し。偖(さて)山中(さんちう)の四方(よも) を眺望(てうぼう)し給ふに。実(げに)猟夫(れうし)が申せしごとく葱嶺(そうれい)銀漢(ぎんかん)をさしはさんで白峯(はくほう)碧落(へきらく)につ けり。東西(とうざい)は龍(りよう)の臥(ふせ)るが如(ごと)く南北(なんほく)は虎(とら)の踞(うづくま)るに似(に)て。浮査(ふさ)に乗(のら)ざれども忽(たちま)ちに天河(てんが)に 入。仙薬(せんやく)を嘗(なめ)ざれとも暗(あん)に神窟(しんくつ)を見る心地(こゝち)し。峰(みね)の松風(まつかぜ)は煩悩(ぼんのふ)の塵(ちり)をはらひ。林(はやし) の鳥(とりの)声(こゑ)は无明(むめう)の睡(ねむり)を覚(さま)し。真(まこと)に修禅(しゆぜん)相応(さうおう)の霊地(れいち)。仏法(ぶつほふ)弘通(ぐづう)の聖跡(せいせき)此地(このち)に勝(まさ) る所(ところ)や有(ある)べきとて。只管(ひたすら)嘆美(たんひ)し給ひ。ほとりの巌(いはほ)に目標(めじるし)のため一 字(じ)の秘符(ひふ)を印(かき) 書(つけ)此上(このうへ)は都(みやこ)へ上(のぼ)り当山(とうざん)開基(かいき)の義(ぎ)を願(ねが)はんとて下山(げさん)し給ふに。二 疋(ひき)の犬(いぬ)は何地(いづち)行(ゆき)けん 影(かげ)だも見えず。是(これ)また不思議(ふしぎ)の事(こと)かなと心中(しんちう)訝(いぶか)り給ひながら。山を下(くだ)りて都(みやこ)へ還(かへ)り