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しに。早(はや)くも御 登山(とうざん)ありて。暫時(しばらく)にても憂苦(うきめ)を見せまゐらせしは空海(くうかい)が遅参(ちさん)の罪(つみ)
なり恕(ゆる)し給へと謝(わび)給ひければ。母公(はゝぎみ)も懺悔(さんげ)ありて。妾(わらは)一時(いちじ)の我慢心(がまんしん)に仏神(ぶつじん)の御 怒(いかり)を
惹出(ひきいだ)せしこそ罪(つみ)深(ふか)けれ。露(つゆ)御 身(み)の科(とが)ならじとて互(たがひ)に辞譲(じじやう)あり。相伴(あひともなふ)て下山(げさん)し給ひ
けるに。随従(つき〴〵)の男女(なんによ)は梺(ふもと)に待(まち)て母公(ぼこう)の恙(つゝが)なきを賀(が)し随遂(おんとも)せざる罪(つみ)を謝(わび)けるにぞ
母公(ぼこう)も衆人(みなひと)の無事(ぶじ)を怡(よろこ)び主従(しゆうじふ)打連(うちつれ)て天野(あまの)の菴(いほり)に着(つき)給ひけり。空海和尚(くうかいおせう)は母(ぼ)
公(こう)と別後(べつご)の御 物語(ものがたり)をなし給ひ。此(この)年来(としごろ)御 側(そば)に在(あつ)て事(つかへ)奉らざる不孝(ふかう)の罪(つみ)は免(ゆる)し
給へと謝(わび)給ひ。仏法(ぶつほふ)の功徳(くどく)の広大(くわうだい)なる事をくれ〴〵と御 教化(きやうけ)ありければ。母公(ぼこう)は感涙(かんるい)を止(とゞめ)
かね給ひ身(み)の罪障(ざいしやう)消滅(せうめつ)のため尼(あま)にならまほしき由(よし)を願(ねがひ)給ひけるゆへ。師(し)も御 喜悦(きゑつ)
ありて即時(そくじ)に戒(かい)を授(さづ)け給ひけり。母公(ぼこう)御 怡(よろこ)び限(かぎり)なく。遂(つひ)に髻(もとゞり)をはらひ尼(あま)となり玉
ひければ召使(めしつかひ)の男女(なんによ)みな諸(もろ)ともに剃髪(ていはつ)の義(ぎ)を願(ねがひ)けるに。空海(くうかい)曰(のたま)はく尼 公(こう)の御 介抱(かいほふ)
には女人(によにん)こそよけれ。男子(なんし)は入道(にふどう)無用(むよう)たるべしとて女子(によし)許(ばかり)剃髪(ていはつ)を許(ゆる)し給ひ男子(なんし)の分(ぶん)は