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真紹(しんぜう)真然(しんねん)是(これ)を舁(かい)て奥(おく)の院(いん)へ移(うつ)し奉り。七日々々(なぬか〳〵)の御 斎忌(さいき)厳重(げんぢう)に執行(とりおこな)ひ
御 弟子(てし)達(たち)七日(なぬか)毎(ごと)に奥(おく)の院(いん)参詣(さんけい)ありて拝(おが)み奉(たてまつ)らるゝに。神色(しんしよく)少(すこ)しも変(へん)じ玉はず
御 髪(かみ)鬚(ひげ)漸々(ぜん〳〵)に長(なが)く伸(のび)させ給ふぞ奇特(きどく)なりける。斯(かく)て空海(くうかい)大 僧都(そうづ)入定(にふでう)なし
玉ひし趣(おもむ)きを朝廷(てうてい)へ奏聞(そうもん)ありければ帝(みかど)《割書:仁明(にんめう)|天皇》も上皇(じやうかう)《割書:淳|和》も御 悼(いたみ)大方(おほかた)ならず。恐(おそれ)
多(おほく)も帝(みかど)は是(これ)がために。政事(まつりこと)を廃(はい)し給ふこと三日に及(および)玉ひけり同廿五日 勅使(ちよくし)を以(もつ)て御 袈(け)
裟(さ)座具(ざぐ)如意(によい)香炉(かうろ)水瓶(すいへう)湯器(たうき)等(とう)を贈(おく)り給(たま)はり。上皇(じやうかう)よりも院使(いんし)を立(たて)給ひ宸翰(しんかん)
の御 弔書(とふらひふみ)并(ならひ)に種々(しゆ〴〵)の御 贈物(おくりもの)有(あり)けり。天下の人民(にんみん)空師(くうし)御入定(ぎにふでう)ありしと伝聞(つたへきゝ)貴(き)と
なく賎(せん)となく悼(いたみ)惜(をしま)ざるはなし。後年(こうねん)文徳(もんとく)天皇の天安(てんあん)二年十月十七日大 僧正(そうせう)の宦(くわん)を
贈(おく)り給ひ。又 貞観(でうぐわん)六年二月十六日 法印(ほふいん)大 和尚(くわせう)に叙(しよ)し給ひ。醍醐天皇(だいごてんわう)の延喜(えんぎ)二十
一年十月廿七日 弘法大師(かうぼふだいし)と謚(おくりな)を賜(たま)はりける。誠(まこと)に本朝(ほんてう)無双(ぶそう)の名僧(めいそう)にて末世(まつせ)の今に
扶桑皇統後編巻之三畢 いたる迄御 利益(りやく)端的(あらた)なる事申も中々(なか〳〵)疎(おろか)也