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生(ぜう)し五十六 億(おく)七千万 歳(ざい)の後(のち)龍華(りうげ)三 会(ゑ)の暁(あかつき)弥勒仏(みろくぶつ)出世(しゆつせ)の時(とき)を待(まつ)て我(われ)又 此(この)
娑婆世界(しやばせかい)へ生(せう)を託(たく)し一 切(さい)衆生(しゆぜう)を化度(けと)すべし。高野山(かうやさん)は真然(しんね[ん])に付属(ふぞく)し。東寺(とうじ)は
実恵(じつゑ)に預(あづ)け弘福寺(くふくじ)は真雅(しんが)。神護寺(じんごし)は真済(しんせい)に授(さつく)べしと御 遺言(ゆいごん)有(あり)ければ高弟(かう[て]い)
達(たち)大いに駭(おどろ)き。是(こ)は何(いか)なる御事ぞや。今 幾年(いくとし)御 在世(ざいせ)なし給ひて我(わが)徒(ともがら)に教示(きやうじ)せさせ
給へと願(ねがひ)けれども敢(あへ)て御 承引(しやういん)なく猶(なを)後(のち)の事を御 教誡(きやうかい)有(あり)けるが。程(ほど)なく其年(そのとし)も
暮(くれ)明(あく)れば仁明天皇(にんみやうてんわう)の承和(しやうわ)二年 乙卯(きのとう)三月廿一日 寅剋(とらのこく)【尅は俗字】本坊(ほんばう)にて結跏趺座(けつかふざ)し給ひ
御 弟子(でし)達(たち)に仰(あふせ)けるは我(わが)眼(め)を閉(とづ)るを入定(にふでう)の期(ご)とし奥(おく)の院(いん)の室(むろ)へ送(おく)るべしとて。大日如(だいにちによ)
来(らい)の秘印(ひいん)を結(むす)び終(つひ)に禅定(ぜんでう)に入給ひけり。春秋(しゆんじふ)六十二才にぞ在(おは)しける。御 弟子(てし)達(たち)は囲(ゐ)
繞(ねう)して弥勒菩薩(みろくぼさつ)の宝号(ほうがう)を唱(となへ)て居(ゐ)られけるが。已(すで)に空師(くうし)御 眼(め)を閉(とぢ)給ひければ。各(おの〳〵)
悲哀(ひあい)の涙(なみだ)に三 衣(え)を絞(しぼ)らぬはなく偏(ひとへ)に釈尊(しやくそん)の入滅(にふめつ)を悲(かなし)みし諸(しよ)羅漢(らかん)に異(こと)ならず。然(され)
ども斯(かく)て有(あり)果(はつ)べきにあらざれば泣々(なく〳〵)御 輿(こし)に乗(のせ)まゐらせ実恵(じつゑ)真雅(しんが)真如(しんにょ)真済(しんせい)