Gallicaの日本資料を翻刻!

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種類(しゆるい)なりけるが。生質(せいしつ)剛勇(がうゆう)なる上 頗(すこぶ)る胆略(たんりやく)有(あり)ければ。麾下(きか)に属(ぞく)する者 追々(おひ〳〵)多(おほ) くなりて数郡(すうぐん)を領(れう)し勢(いきほひ)強(つよ)かりける。此(この)呰麻呂(しまろ)兼(かね)て心をかけて忍(しの)び通(かよ)ふ女あり。其(その) 容色(ようしよく)衆(しゆう)に勝(すぐ)れ。都(みやこ)恥(はづか)【耻は俗字】しき風姿(すがた)なりけるを。広純(ひろずみ)伝聞(つたへきゝ)て見ぬ恋(こひ)にあくがれ。度(たび) 々(〳〵)文(ふみ)を贈(おくつ)て口説(くどき)けれども。女は呰麻呂(しまろ)が思(おも)はんところを憚(はゞか)りて一 度(ど)も返事(かへりこと)をせず。難面(つれなく) てのみ過(すご)しければ。広純(ひろずみ)弥(いよ〳〵)心を悩(なや)まし。是(これ)呰麻呂(しまろ)が有(ある)ゆへに靡(なび)かぬなるべしとて。家(け) 人(にん)に命(めい)じて一夜(あるよ)暗(ひそか)に女が宿(やど)へ潜入(しのびいら)せ。有無(うむ)を言(いは)せず理(わり)なく女を奪(うばひ)とらせ。我館(わがやかた)【舘は俗字】へ 迎(むか)へて百般(さま〳〵)言(ことば)を尽(つく)しかき口説(くどき)けるにぞ。流石(さすが)浅(あさ)はかなる女心(をんなごゝろ)とて。さしも年月(としつき)契(ちぎり)し 呰麻呂(しまろ)の事を打忘(うちわすれ)広純(ひろずみ)の心に従(したが)ひけるにより。広純(ひろずみ)大いに悦(よろこ)び女を寵愛(てうあい)する事 他(た)に異(こと)なりけり。呰麻呂(しまろ)は最愛(さいあい)の通妻(かよひづま)を奪取(ばいとら)れて心(むね)を燃(もや)し怒憤(いかりいきどふ)れども。国司(こくし)の 威勢(いせい)に圧(おさ)れて奪返(ばひかへ)す事 能(あた)はず。よく〳〵時節(じせつ)を窺(うかゞ)ひ此怨(このうらみ)を報(ほふ)ぜんものと 無念(むねん)を隠(かく)して色(いろ)にも見(あらは)さず。多(おほ)くの賄賂(まいなひ)を広純(ひろずみ)に贈(おく)り。詳(わざ)と媚諛(こびへつら)ひけれ