Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

- 翻刻

 - ページ 29

ページ: 29

翻刻

ば広純(ひろずみ)実(まこと)に伏従(ふくじふ)せしぞと思(おも)ひ。心うち解(とけ)て万端(よろづ)隔(へだて)なく呰麻呂(しまろ)と商議(しやうぎ)し聊(いさゝか) も疑心(ぎしん)なく。何(なん)の要慎(ようじん)をもせざりけり。呰麻呂(しまろ)は広純(ひろずみ)を誑(あざむ)きすまして独(ひとり)笑(ゑみ)【咲は笑の古字】し。時(とき)を 窺(うかゞ)ふ中(うち)に一時(あるとき)広純(ひろずみ)が麾下(きか)の諸士(しよし)国政(こくせい)に就(つい)て諸方(しよはう)の郡県(ぐんけん)へ別(わか)れ赴(おもむ)き。広純(ひろずみ)の 館(やかた)【舘】はなはだ無人(ぶにん)なりければ。呰麻呂(しまろ)須波(すは)待設(まちまふけ)たる時節(じせつ)ごさんなれと。兼(かね)て随身(ずいしん) せし野武士(のぶし)胆沢悪太郎(いざはあくたらう)金窪兵太(かなくぼひやうだ)なんど。強勇(がうゆう)の溢者(あぶれもの)を先(さき)として究竟(くつけう)の者(もの)二 百 余人(よにん)に武具(ものゝぐ)させ夜中(やちう)前後(ぜんご)二隊(ふたて)に分(わか)れ広純(ひろずみ)が館(やかた)【舘】へひた〳〵と押寄(おしよせ)先(まづ)表門(おもてもん)へ向(むか) ひたる胆沢(いざは)悪(あく)太郎。二百人に下知(げぢ)を伝(つた)へ倉卒(にはか)に松明(たいまつ)を点(とも)し連(つれ)一斉(いつせい)に喊(とき)を撞(どつ)とあげ【注】 表門(おもてもん)を打破(うちやぶつ)て我先(われさき)にと乱(みだ)れ入ければ。広純(ひろずみ)が家人(けにん)們(ら)思(おもひ)もよらぬ不意(ふい)の夜討(ようち)に大に 周障(しうせう)騒動(そうどふ)し。太刀(たち)よ弓(ゆみ)よと犇(ひしめ)き上(うへ)を下(した)へとぞ反(かへ)しける。広純(ひろずみ)も仰天(ぎやうてん)しながら必定(ひつでう)野武(のぶ) 士(し)山賊(さんぞく)の属(たぐひ)ならめ。何程(なにほど)の事かあらん蹴散(けちら)せよと下知(げぢ)しけるにぞ。折節(をりふし)在番(ざいばん)の武士(ぶし)無(ぶ) 人(にん)にて在合(ありあは)せたる衛士(ゑいし)五十 余人(よにん)。主(しゆう)の下知(げぢ)を承(うけ)て太刀先(たちさき)を揃(そろ)へ。打入者(うちいるもの)を散々(さん〴〵)に切払(きりはら)ひ 【注 国立国会図書館デジタルコレクションhttps://dl.ndl.go.jp/pid/771530/1/145を参照す】