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を過(すご)したり。一度(ひとたび)親族(しんぞく)の安否(あんひ)を訪(とは)んため故里(ふるさと)へ帰(かへ)り。再(ふたゝ)び此所(このところ)へ来(きた)り永(なが)く夫婦(ふうふ)の契(ちぎ)
りをなすべし。暫時(しばし)の暇(いとま)をゆるし候へと言(いひ)ければ。女が曰(いはく)。のたまふ所 理(ことは)りながら。此所(こゝ)は蓬莱(ほうらい)
の都(みやこ)とて容易(たやすく)人間(にんげん)の来(きた)る事 能(あた)はざる仙境(せんけう)なり。然(しかれ)ども君(きみ)は隠徳(いんとく)によりて妾(わらは)此都(このみやこ)
へ伴(ともな)ひ進(まいら)せたり。今は故郷(ふるさと)の事を思(おもひ)捨(すて)て此(この)宮中(きうちう)に留(とゞま)り妾(わらは)と長(とこしな)へに契(ちぎり)をなし給へと諫(いさめ)
留(とゞ)めけれども。浦島(うらしま)は只管(ひたすら)故郷(こけう)を思(おも)ふ念(ねん)禁(きん)じがたく。強(しい)て暇(いとま)を望(のぞみ)けるゆへ。女も為方(せんかた)なく
一ツの手筥(てばこ)を採出(とりいだ)して浦島(うらしま)に与(あた)へて曰(いはく)。是(こ)は玉手筥(たまてばこ)と号(なづけ)て此都(このみやこ)に二ツとなき宝(たから)にてはべり
是(これ)を御 身(み)に進(まい)らせ候あいだ携(たづさ)へて古郷(ふるさと)へ帰(かへ)り。再(ふたゝ)び此都(このみやこ)へ来(きた)り給へ。決(けつ)して此(この)筥(はこ)の蓋(ふた)を
開(ひらき)給ふ事 勿(なか)れ。もし過(あやま)つて蓋(ふた)を開(あけ)玉はゞ再(ふたゝ)び此所(このところ)へ帰(かへ)り給ふ事 能(あた)はず。却(かへつ)て御 身(み)に大
なる禍(わざはひ)あるべし。能々(よく〳〵)慎(つゝし)み努々(ゆめ〳〵)此(この)詞(ことば)を忘(わす)れ給ふなとくれ〴〵と言(いひ)教(をしへ)ければ。浦島(うらしま)諾(うべな)いて
玉手筥(たまてばこ)を受収(うけおさ)め多(おほ)くの侍女(こしもと)們(ら)に送られて海岸(かいがん)にいたり。衆(もろ〳〵)の女の教(をしへ)にまかせ。又 目(め)を
閉(とぢ)て何(なに)にか乗(の)り海中(かいちう)を渡(わた)るとおもふ事 須臾(しばらく)にして岸(きし)に着(つき)たり。此時(このとき)陸(くが)に上り目(め)を開(ひらき)