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ともに史庁(しのてう)へぞ曳(ひい)てかへりける。基経(もとつね)。善雄(よしを)父子(ふし)を庭上(ていしやう)に曳居(ひきすへ)させ。放火(はうくわ)の𥝒(とが)を糺明(きうめい)
せられけるに。善雄(よしを)務々(ゆめ〳〵)覚(おぼへ)なきよし陳謝(いひひらき)しけるに依(より)。彼(かの)鷹取(たかとり)を曳出(ひきいだ)させて対論(たいろん)させ
ければ。善雄(よしを)忽(たちま)ち言句(ごんく)に詰(つま)り終(つひ)に罪(つみ)に伏(ふく)しけるにより。緊(きびし)く禁獄(きんごく)させ。偖(さて)相国(しやうこく)良(よし)
房公(ふさこう)へ斯(かく)と言上(ごんじやう)しければ。兼(かね)て贔屓(ひいき)の善雄(よしを)が義(ぎ)なれば。相国(しやうごく)は大いに駭(おどろ)かれ。彼(かの)仁(じん)は生得(しやうとく)
忠直(ちうちよく)の性(さが)なるに。何(なに)ゆへさる大 罪(ざい)を犯(おか)しけるぞと当惑(とうはく)ありけれども我(われ)と白状(はくぜう)せし上(うへ)は奈(い)
何(かん)ともしがたく。大切(たいせつ)なる禁門(きんもん)に火(ひ)をかけし大罪(だいざい)なれば死刑(しけい)に極(きはま)るといへども。帝(みかど)に功(かう)あるを
以(もつ)て相国(しやうごく)種々(さま〴〵)基経(もとつね)を説(とき)宥(なだ)められ。死罪(しざい)一 等(とう)を宥(ゆる)し。善雄(よしを)は伊豆国(いづのくに)。善佐(よしすけ)は讃岐国(さぬきのくに)へ
流罪(るざい)にし其余(そのよ)の一 族(ぞく)十 余人(よにん)も尽(こと〴〵)く流刑(るけい)に所(しよ)せられ家士(いへのこ)も罪(つみ)の軽重(けいぢう)に依(よつ)てそれ〳〵
に刑法(しおき)を定(さだ)め就中(なかんづく)浪士(らうにん)鷹取(たかとり)は。善雄(よしを)が頼(たのみ)とはいへども。御門(ごもん)に火(ひ)をさしたる大罪(だいざい)の上
己(おの)が欲心(よくしん)を遂(とげ)ざるを以(もつ)て訴人(そにん)に出(いで)し条(でう)。不義(ふぎ)表裏(へうり)の国賊(こくぞく)なりとて重(おも)く死刑(しけい)にぞ行(おこな)
はれける。誠(まこと)に今度(このたび)の珍事(ちんじ)の起(おこり)は名虎(などら)が憤霊(ふんれい)の祟(たゝり)【崇は誤】也と諸人(しよにん)挙(こぞつ)て怕(おそれ)ざるは無(なか)りけり