Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 382

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なんど物(もの)あはれにしたゝめ玉ひし御 玉章(たまづさ)の奥(おく)に書(かき)てぞ贈(おくり)給ひける其(その)御製(ぎよせい)は   筑波根(つくばね)の峯(みね)よりおつるみなの川 恋(こひ)ぞつもりて淵(ふち)となりぬる とあり御 哥(うた)の意(こゝろ)は常州(じやうしう)筑波山(つくばやま)は此面(このも)彼面(かのも)の蔭(かげ)滋(しげ)く。㵎々(たに〳〵)より流出(ながれいづ)る水(みづ)美奈野川(みなのがは) といふ川へ落合(おちあひ)ては底(そこ)しらぬ淵(ふち)となるごとく。朕(ちん)も君(きみ)を恋(こふ)る心の積々(つもり〳〵)て深(ふか)き思(おもひ)に沈(しづ)むぞ との御製(おんうた)なり。実(げに)や倭哥(やまとうた)の徳(とく)は猛(たけ)き武士(ものゝふ)の心をも慰(なぐさ)め男女(をとこをんな)の中(なか)をも和(やはら)ぐると書(かき)し ごとく。釣殿(つりどの)の君(きみ)も此(この)御製(ぎよせい)を唫(ぎん)じ給ひて感情(かんじやう)を催(もよほ)し給ひ。かほどにまで浅(あさ)からず思(おぼし) 召(めす)をさのみは争(いかで)難面(つれなく)て止(やみ)奉るべきと御心 解(とけ)遂(つひ)に稲船(いなぶね)のいなにはあらぬよし御 返事(かへりこと)の 文(ふみ)を奉り給ひければ。帝(みかど)大いに御 欣(よろこび)あり。頓(やが)て迎(むかへ)とり給ひて。錦帳(きんてう)の内(うち)に玉(たま)の枕(まくら)をならべ 玉ひ。偕老(かいらう)の御 契(ちぎり)深(ふか)く。是(これ)より釣殿(つりどの)の君(きみ)を片時(へんし)も御 側(そば)を放(はな)ち玉はず。今まで君寵(くんてう)を 蒙(かうむ)り給ひし女御(にようご)宮妃(きうひ)は閨(ねや)の巣守(すもり)となりて。枕(まくら)の塵(ちり)と倶(とも)に積(つも)る怨(うらみ)のやる方(かた)なく。各(おの〳〵)心(むね)を合(あは)し て釣殿(つりどの)の君(きみ)を咒咀(のろひ)。または帝(みかど)の御 行迹(ふるまひ)を悪(あし)さまに風説(とりさた)し。正(まさ)しく叔母君(おばぎみ)を玉体(ぎよくたい)近(ちか)く召(めし)