Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 384

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寄(よせ)て幸(さいは)ひし給ふは世(よ)の乱(みだ)るゝ端(はし)なりなどゝ言触(いひふら)し。或(あるひ)は釣殿(つりどの)の君(きみ)の帝(みかど)の寝殿(しんでん)へ通(かよ)ひ 給ふ廊下(らうか)に種々(さま〴〵)怪(あやし)き姿(すがた)の者を造(つくり)置(おき)て怕(おど)しなんどしければ。素(もとよ)り心弱(こゝろよは)き御 本性(ほんぜう)の釣(つり) 殿(どの)の君(きみ)。度々(たび〳〵)魘(おそは)れ給ひ遂(つひ)に重(おも)き患病(いたつき)に打臥(うちふし)給ひける。帝(みかど)大いに駭(おどろ)かせ給ひ。典薬(てんやく)の医(い) 宦(くわん)に委(ゆだね)諸寺(しよじ)諸社(しよしや)に勅詔(みことのり)して加持祈祷(かじきとう)させ給へども。露(つゆ)ばかりの験(しるし)もなく終(つひ)に空(むな)しく 成(なり)給ひけるにぞ。帝(みかど)の御 悲歎(ひたん)限(かぎ)りなく。李夫人(りふじん)に別(わか)れし漢王(かんわう)の悲(かなし)み。楊貴妃(やうきひ)に後(おくれ)し 唐帝(とうてい)の歎(なげ)きも。今は御 身(み)の上(うへ)となり。哀涙(あいるい)に御衣(ぎよい)の袂(たもと)を朽(くた)し給ひ。是(これ)より何(なに)となく発(ものぐ) 狂(るは)しくならせ給ひ。局々(つぼね〳〵)の女房(にようばう)の寐(いね)たる処(ところ)へ忍(しの)んで渡御(とぎよ)なし給ひ。其(その)黒髪(くろかみ)を根(ね)より弗(ふつ) 々(〳〵)と剪捨(きりすて)。また弓(ゆみ)の鉾(ほこ)を以(もつ)て寐(いね)たる宮女(きうぢよ)の陰所(いんしよ)を突(つい)て殺(ころ)し給ふ時(とき)もあり。一時(あるとき)は近侍(きんじ) の臣下(しんか)を科(とが)もなきに御剣(ぎよけん)にて御 手討(てうち)になし給ひ。聊(いさゝか)にても御意(ぎよい)に叶(かなは)ざる事あれば。男(なん) 女(によ)の差別(しやべつ)なく御 太刀(たち)を抜(ぬき)給ひて追廻(おひまは)し斬殺(きりころ)し給ふもあり。傷(きずつ)け給ふも少(すくな)からず。彼(かの)釣(つり) 殿(どの)を咒咀(しゆそ)せし女宦(によくわん)は悉(こと〴〵)く御 手討(てうち)に遭(あひ)けるゆへ。誰(た)がいふとなく帝(みかど)の御 狂乱(きやうらん)は釣殿(つりどの)の