Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 385

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亡魂(ぼうこん)の為(なす)業(わざ)なりと言出(いひいだ)し。また夜陰(やいん)におよべば。長陛中殿(ながはしちうでん)などにて釣殿(つりどの)の君(きみ)の 痩細(やせほそ)り白(しろ)き衣(きぬ)の上(うへ)に丈(たけ)なる黒髪(くろかみ)を振乱(ふりみだ)し。さも物凄(ものすご)き面皃(おもざし)にて停立(たゝずみ)給ふを見受(みうけ) 怕(おそ)れ魂断(たまぎり)て悶絶(もんぜつ)し。それより心神(しん〴〵)悩乱(のふらん)し病(やみ)困(くるし)む女房(にようばう)達(たち)も多(おほ)かりけり。帝(みかど)は御 狂病(きやうびやう) 愈(いよ〳〵)厲(はげ)しく。一時(あるとき)は寮(れう)の御馬(おむま)に駕(めさ)れて庭上(ていせう)より御殿(ごてん)へ騎上(のりあげ)宮女(きうぢよ)宦人(くわんにん)們(ら)を駈(かけ)仆(たを)し 給ひ。又 一時(あるとき)は宦女(くわんぢよ)を裸体(あかはだか)にして庭上(ていせう)へ追下(おひくだ)し。犬(いぬ)を闘(たゝか)はせて怕(おそ)れ惑(まどふ)を興(けう)じ給ひ。或(あるひ)は 地下(ぢげ)の男女(なんによ)を捉(とらへ)て樹(き)の末(そら)へ上(のぼ)らせ。下(した)より戟(ほこ)を以(もつ)て突殺(つきころ)し。或(あるひ)は蛙(かはづ)を多(おほ)く取寄(とりよせ)させて 蛇(へび)に呑(のま)せ。犬(いぬ)と猿(さる)とを噛合(かみあは)させ給ふなんど。偏(ひとへ)に殷(いん)の紂王(ちうわう)の行迹(ふるまひ)に異(こと)ならざれば。後々(のち〳〵) は女房(にようばう)諸臣(しよしん)も忌怖(いみおそれ)て御前(ごぜん)に参仕(まいりつかふ)る者一人もなく。斯(かく)ては帝位(ていゐ)に在(ましま)さん事 奈何(いかゞ)有(あら) んと危踏(あやぶま)ぬ人もなかりけり。然(しかる)に摂政(せつしやう)基経公(もとつねこう)思慮(しりよ)を回(めぐ)らされ。一時(あるとき)君(きみ)の御前(ごぜん)へ伺候(しかう) し。頃日(このごろ)は御 徒然(とぜん)に見えさせ給へば。明日(みやうにち)臣(しん)が邸舎(やしき)にて三十 番(ばん)の競馬(けいば)を催(もよほ)し睿覧(ゑいらん)に 典(そな)へ奉り候はんあいだ御幸(みゆき)なし給(たま)はり候へと奏(そう)せられければ。帝(みかど)は御生得(ごせうとく)馬(むま)を駈(かく)る事を好(この)