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猶(なを)また己(おの)が兄(あに)の阿波介(あはのすけ)なる者に命(めい)じ高松何某(たかまつなにがし)謀叛(むほん)の聞え隠(かくれ)なし急(いそ)ぎ馳向(はせむかひ)
て誅伐(ちうばつ)すべしと告(つげ)けるにより。元来(もとより)無道(ぶどう)の阿波介(あはのすけ)一 議(ぎ)にも及(およ)ばず三百余人の兵卒(へいそつ)を
率(ひい)て高松(たかまつ)が宿所(しゆくしよ)へ寄付(よせつけ)無(む)二無(む)三に攻立(せめたて)けるゆへ。高松(たかまつ)は思(おもひ)がけなき不意(ふい)を伐(うた)れ
防戦(ばうせん)已(すで)に難義(なんぎ)に及(およ)びしかば。両人(りようにん)の小女(をとめ)に対(むか)ひ。弓矢(ゆみや)とる身(み)はかゝる折(をり)に命(いのち)を惜(をし)まぬ
ならひなれば。某(それがし)は敵中(てきちう)に斬入(きりいつ)て思(おも)ふ程(ほど)敵(てき)を悩(なやま)し斬死(きりじに)し候べし。御 身(み)たちは我知己(わがしるべ)
の者 津国(つのくに)須磨(すま)の後(うしろ)なる田井畑(たゐのはた)の長(てう)が許(もと)へ落行(おちゆき)彼者(かのもの)に身(み)を寄(よせ)て命(いのち)を全(まつた)うし時節(じせつ)
を待(まつ)て父(ちゝ)大領殿(だいれうどの)に身(み)に罪(つみ)なき事(こと)を訴(うつた)へ再(ふたゝ)び父子(ふし)和順(わじゆん)の期(とき)を得(え)給へと諫(いさめ)けるに
是(これ)に候 姉妹(おとゞい)の者(もの)は杖柱(つえはしら)とも頼(たのみ)たる牟礼(むれ)には後(おく)れ。高松(たかまつ)さへ討死(うちじに)せんといふにいたく力(ちから)を
落(おと)し。泣々(なく〳〵)高松(たかまつ)に向(むか)ひ。妾(わらは)姉妹(おとゞい)ゆへに御 身(み)を戦死(うちじに)させ何(なん)の面目(めんぼく)ありてか世(よ)に存命(ながらへ)侍(はべ)る
べき。ともに自害(じがい)し同じ道(みち)に往(ゆか)んと言(まうし)けるを。高松(たかまつ)種々(さま〴〵)諫(いさめ)すかし。従者(ずさ)を添(そへ)て後門(うらもん)より落(おと)
し其身(そのみ)は遂(つひ)に敵軍(てきぐん)の中へ馳入(はせいり)おもふ儘(まゝ)に敵(てき)を切(きり)悩(なやま)し斬死(きりじに)し候とぞ。此(この)両女(ふたり)は船(ふね)にて