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我方(わがかた)へ落来(おちきた)り今 語(かた)り候おもむきを逐一(ちくいち)に語(かた)り高松(たかまつ)が書信(てがみ)をさし出(いだ)し身(み)の上(うへ)を
泣々(なく〳〵)頼(たの)み候ゆへ。便(びん)なくおもひ召抱(めしかゝへ)て今日(こんにち)まで養(やしな)ひ置(おき)候なりと。一五十(いちぶしゞう)を落(おち)もなく
長々(なが〳〵)と語(かたり)けるにぞ。姉妹(おとゞい)の小女(をとめ)は懐旧(くわいきう)の涙(なみだ)にくれて伏沈(ふししづみ)ける。行平(ゆきひら)聞毎(きくごと)に感慨(かんがい)し
昔(むかし)も今も継母(けいぼ)の讒害(ざんがい)こそ薄情(うたて)けれ。さればこそ二人の女の由(よし)有(あり)【注】げに見えしも理(ことはり)
なり。予(われ)此(この)配所(はいしよ)に在(あら)んほどは召使(めしつか)ひ。勅勘(ちよくかん)御免(ごめん)を蒙(かうむ)り帰洛(きらく)せば。可然(しかるべく)はからひ得(え)さす
べし。予(よ)年闌(としたけ)て若(わか)き女を左右(てまはり)に召使(めしつかふ)を好色(すき)がましく思(おも)ふ者も有(ある)べけれども左(さ)に非(あら)
ず。只(たゞ)配所(はいしよ)の徒然(とぜん)を慰(なぐさ)めんためのみなりとて。長(てう)には二女の身(み)の代(しろ)として多(おほ)くの金(こがね)を
与(あた)へられければ。長(てう)は大いに悦(よろこ)び拝謝(はいしや)してぞ立帰(たちかへり)ける。斯(かく)て行平(ゆきひら)は二人の小女(をとめ)を洒帚(めしつかひ)とせられ
けるが。唐山(もろこし)吾朝(わがてう)にても閑居(かんきよ)する身(み)は松風(せうふう)村雨(そんう)を友(とも)とするならひなればとて。其(それ)に準(なぞら)へ
姉(あね)を松風(まつかぜ)と呼(よび)妹(いもと)を村雨(むらさめ)と号(なづけ)て。憂(うき)を慰(なぐさ)む便(よすが)とせられけり。其后(そのゝち)三年(みとせ)立(たつ)て流罪(るざい)恩(おん)
免(めん)の宣旨(せんじ)を蒙(かうむ)り皈洛(きらく)ありし折(をり)松風(まつかぜ)村雨(むらさめ)には数多(あまた)の引出物(ひきでもの)を与(あたへ)られければ二女(にぢよ)は
【注 振り仮名が「あけ」に見えるが誤記と思われる】