Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 412

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怕(おそ)ろしき鬼神(きじん)現(あらは)れ出(いで)高声(かうしやう)に 氷(こほり)消(きへては)波(なみ)《振り仮名:洗_二旧苔鬚_一|きうたいのひげをあらふ》 と唫(ぎん)じける。良香(よしか)大(おほ) いに駭(おどろ)き我句(わがく)に対(つひ)して吟(ぎん)じ見るに。天晴(あつはれ)秀逸(しういつ)の。対句(ついく)なりければ斜(なゝめ)ならず悦(よろこ)び。是(これ) 鬼神(きしん)我(われ)を佐(たすけ)て此(この)金玉(きんぎよく)の佳句(かく)を給(たま)へりと拝謝(はいじや)して。心も勇(いさ)み欣然(いそ〳〵)として我(わが)邸舎(やしき)へ 帰(かへ)られけるが。翌日(よくじつ)道真卿(みちざねけう)入来(じゆらい)ありければ。良香(よしか)右の二 句(く)を書(かい)てさし出(いだ)し昨夜(さくや)此(この) 一 聯(れん)の句(く)を得(え)候。高判(かうはん)をなし玉はるべしと言(まうさ)さ【語尾の衍ヵ】れけるにぞ。道真卿(みちざねけう)手(て)にとりて押頂(おしいたゞ)き 先(まづ)上(かみ)の句(く)を吟(ぎん)じ。次(つぎ)の句(く)を見(み)て何(なに)とか思(おも)ひ給ひけん。扇(あふぎ)を開(ひらい)て居置(すへおき)座(ざ)を立(たつ)て手(て) を洗(あら)ひ浄(きよ)め装束(しやうぞく)【𫌏は辞書に無し】を刷(かいつくろ)ひて正(たゞ)しく坐(ざ)し給ひしかば。良香(よしか)は心中(しんちう)に。此人(このひと)暫(しばら)くにても我(われ) に物(もの)学(まなび)せられしゆへ。師弟(してい)の礼義(れいぎ)を重(おも)んぜらるゝ成(なる)べしと思(おも)ひ。是(こ)は慇懃(いんぎん)なる御 事かな。それには迨(およ)び申さゞるにと申さるゝに道真卿(みちざねけう)答(こたへ)て。否(いな)左(さ)には候はず。前句(ぜんく)は 御 自作(じさく)にて候べけれども。後(あと)の句(く)は人間(にんげん)の作(さく)ならず。必定(ひつぢやう)鬼神(きしん)の句(く)にて候べければ。一(ひと) しほ敬(うやま)ひ候なりと仰(あふせ)けるにぞ。良香(よしか)仰天(ぎやうてん)して心中(ころのうち)に此(この)人は凡人(ぼんにん)ならず神(しん)に通(つう)ぜられ