Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

- 翻刻

 - ページ 414

ページ: 414

翻刻

けりと驚嘆(きやうたん)し。自作(じさく)なりと言(いひ)し事の今更(いまさら)恥(はずか)【耻は俗字】しく後悔(こうくわい)して。誠(まこと)に卓見(たくけん)の程(ほど)怕(おそれ) 入候なり。実(じつ)は如是々々(かやう〳〵)にて候と。有(あり)し次第(しだい)を語(かたら)れければ。道真卿(みちざねけう)も微笑(びせう)し玉ひ 実(げに)さる事にて候べし御 作(さく)の絶妙(ぜつめう)なるに感(かん)じ鬼神(きしん)対句(ついく)を吐(はき)しなるべければ。両句(りようく)とも 御 自作(じさく)同然(どうぜん)に候とて返(かへ)されけるとぞ。其後(そのゝち)寛平(くわんへい)二年の春(はる)讃岐守(さぬきのかみ)に任(にん)ぜられ任国(にんこく)に 赴(おもむ)き給ひ一 国(こく)の政務(せいむ)を裁判(さいばん)あり。南条郡(なんでうごほり)滝(たき)の宮(みや)の宦府(やくやしき)に住(ぢう)し給ひて暮春(ぼしゆん)の比(ころ)松(まつ) 山に遊(あそ)び風景(ふうけい)を眺望(てうぼう)し給ひ。入興(じゆけう)のあまりに二 句(く)の詩(し)を賦(ふ)し給ふ其(その)詩(し)に曰    《振り仮名:低_レ趐|つばさをたるゝ》沙鴎(しやわうは)潮(しほの)落(おつる)暁(あかつき)  《振り仮名:乱_レ糸|いとをみだす》野馬(やばは)草(くさの)【艸】深(ふかき)春(はる) 然(しかる)に其年(そのとし)の四月より七月にいたるまで雨(あめ)降(ふら)ず旱(ひでり)続(つゞ)き農民(のうみん)大いに困窮(こんきう)しければ 道真卿(みちざねけう)是(これ)を憐(あはれ)み給ひ。城(しろ)の山の神(かみ)に祈誓(きせい)し祈雨(あまごひ)の壇(だん)を築(きづ)き是(これ)に登(のぼ)りて 丹誠(たんせい)を凝(こら)し雨(あめ)を祈(いのり)給ひしに。第三日目(だいみつかめ)より大雨(たいう)降出(ふりいだ)しさながら盆(ぼん)を傾(かたむく)るがごとく 三日三夜 小止(をやみ)もなく降徹(ふりとふ)しけるにぞ。市人(てうにん)農民(ひやくせう)腹皷(はらつゞみ)を打(うつ)て躍(おど)り舞(まひ)怡(よろこ)ぶ事