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扶桑皇統記図会(ふそうくわうとうきづゑ)後編(こうへん)巻之六
浪華 好華堂野亭参考
朱雀院(しゆじやくいん)朝覲(てうきんの)御幸(みゆき) 時平(ときひら)光(ひかる)等(ら)《振り仮名:謀_レ黜_二菅公_一|かんこうをしりぞけんとはかる》条
左大臣(さたいじん)時平(ときひら)の不徳(ふとく)に引替(ひきかへ)て。右大臣(うだいじん)道真公(みちざねこう)は。朝家(てうか)を重(おも)んじ忠勤(ちうきん)を励(はげ)み給ひける
により。上皇(じやうかう)《割書:宇|多》殊更(ことさら)に菅公(かんこう)を御 贔屓(ひいき)に思召(おぼしめし)常(つね)に朱雀院(しゆじやくいん)へ召(めさ)れて政事(せいじ)等(とう)を
談(だん)じ給ひけり。一年(ひとゝせ)菅公(かんこう)いまだ右大臣(うだいじん)に昇進(せうしん)し玉はざる以前(いぜん)。昌泰(しやうたい)元年(ぐわんねん)上皇(ぜうかう)奈良(なら)へ
行幸(みゆき)し給ひし時(とき)菅公(かんこう)供奉(ぐぶ)し給ひ。手向山(たむけやま)《割書:東大寺|の内に有》を通(とふ)り給ひし時(とき)の御 哥(うた)に
此(この)たびはぬさもとりあへず手向山(たむけやま)もみぢの錦(にしき)神(かみ)のまに〳〵
と詠(えい)じ給へり。歌(うた)の意(こゝろ)は旅(たび)をするには道々(みち〳〵)の神(かみ)に手向(たむけ)る袚帛(ぬさ)【秡は誤】とて五色(ごしき)の帛(きぬ)を裁(たち)て用(よう)
意(い)すべきなれども。此度(このたび)は大切(たいせつ)なる太上天皇(だぜうてんわう)の供奉(ぐぶ)なれば。道真(みちざね)が私(わたくし)の袚帛(ぬさ)は用意(ようい)し候
はず。此山(このやま)の紅葉(もみぢ)を道祖神(みちのかみ)の御 随意(こゝろまかせ)に道真(みちざね)が手向(たむけ)奉る袚帛(ぬさ)と覧(み)給ひて納受(のふじゆ)させ