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程(ほど)に両陣(りようぢん)押進(おしすゝみ)て阿隈川(あふくまがは)にて互(たがひ)に往合(ゆきあひ)川を隔(へだて)て倶(とも)に屯(たむろ)を立(たて)鉦(かね)太鼓(たいこ)【皷は俗字】を打(うち)螺(ほら)を吹(ふい)て
双方(そうはう)軍威(ぐんい)を示(しめ)し合(あひ)。両陣(りようぢん)喊(とき)を発(つく)り矢合(やあはせ)の鏑(かぶら)を射違(いちが)へ矢軍(やいくさ)を始(はじめ)ける。されば敵(てき)味(み)
方(かた)の飛箭(ひぜん)は横(よこ)しぶく雨(あめ)のごとく矢叫(やさけび)の声(こゑ)は山河(さんか)に響(ひゞ)きすさましなんども疎(おろか)なり。京(きやう)
方(がた)の逸雄(はやりを)の《振り仮名:面ヽ|めん〳〵》。斯(かく)目倦(まだる)き業(わざ)して何時(いつ)まで矢種(やだね)を費(ついや)すべき。川を渡(わた)して雌雄(しゆう)を決(けつ)
せよやと口々(くち〴〵)に呼(よば)はり。打物(うちもの)の兵(へい)三百余人。川を颯(さつ)と渡(わた)しおつと喚(おめい)て切(きつ)てかゝる。金窪(かなくぼ)が勢(せい)
得(え)たりや応(おふ)と。迎(むか)へ合(あは)して切結(きりむす)び追(おつ)つ返(かへ)しつ挑(いど)みあふ。紀古佐美(きのこさみ)是(これ)を見て味方(みかた)討(うた)すな
続(つゞけ)やと下知(げぢ)するに従(したが)ひ残(のこ)る一千二百人 一同(いちどう)に川へ飛入々々(とびいり〳〵)大浪(おほなみ)の打(うつ)ごとく川を渡(わた)し。陸(くが)へ上(あが)
るや否(いな)敵軍(てきぐん)に伐(うつ)てかゝる。其(その)勢(いきほ)ひ猛烈(もうれつ)なりければ。元(もと)より小勢(こぜい)の賊兵(ぞくへい)三 増倍(ぞうばい)の大軍(たいぐん)に
捲(まく)り立(たて)られあしらひ兼(かね)て二三 町(てう)引退(ひきしりぞ)くにぞ京軍(きやうぐん)勝(かつ)に乗(のつ)て追立々々(おつたて〳〵)切進(きりすゝ)みける敵兵(てきへい)
は野武士(のぶし)山賊(さんぞく)の集勢(あつまりぜい)にて。兇勇(けうゆう)なれども軍(いくさ)の進退(かけひき)不鍛錬(ふたんれん)なれば。足並(あしなみ)揃(そろ)はず隊伍(たいご)を
乱(みだ)し弥(いよ〳〵)敗色(まけいろ)に見へける。然(しかる)に。金窪兵太(かなくぼひやうだ)は京将(きやうせう)古佐美(こさみ)を討(うた)んと百人 計(ばかり)を従(したが)へて路(みち)を