Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

- 翻刻

 - ページ 439

ページ: 439

翻刻

賢相(けんしやう)の危(あやふ)きを他(よそ)に見んは忠臣(ちうしん)の所行(しよげう)にあらず。依(よつ)て一 書(しよ)を菅家(かんけ)へ贈(おくり)我(わが)素意(そい) を表(あらは)さんとて。自身(みづから)文章(ぶんしやう)を綴(つゞ)り門人(もんじん)を以(もつ)て菅家(かんけ)へ贈(おく)られける其文(そのぶん)に曰  交(まじはり)浅(あさ)うして語(ご)深(ふか)きは妄(ぼう)也(なり)今(こん)に居(ゐ)て来(らい)を語(かたる)は誕(えん)也(なり)妄誕(ぼうえん)の責(せめ)は素(もとよ)り能(よく)  知(しる)といへども。心に思(おも)ふ事を述(のべ)ざるは不信(ふしん)也(なり)清行(きよゆき)少(すこし)く天文(てんもん)を窺(うかゞふ)事を得(え)候が  今年(こんねん)彗星(けいせい)の現(あらはる)るは朝家(てうか)の大臣(だいじん)に禍(わざはひ)有(ある)べき凶兆(けうてう)也(なり)且(かつ)明年(みやうねん)は辛酉(かのととり)にして天(てん)  命(めい)を革(あらた)むる年(とし)なり。されば朝廷(てうてい)にも物(もの)革(あらたま)る事候べし。最(もつとも)天文(てんもん)は幽微(ゆうび)にして誰(た)  が身(み)に禍(わざは)ひ有(ある)べしとも定(さだ)め難(がた)けれども尊君(そんくん)は翰林(かんりん)より挺(ぬきんで)られて今 槐位(くわいゐ)に昇(のぼり)  皇孫(くわうそん)外戚(ぐわいせき)の上(かみ)に立(たち)給ふ事。古(いにしへ)より吉備大臣(きびだいじん)の外(ほか)有事(あること)なし。夫(それ)高木(かうぼく)は風(かぜ)に悪(にく)  まるゝならひ。疾(はや)く丞相(しやう〴〵)の宦(くわん)を辞(ぢ)し。光(ひかる)定国(さだくに)等(ら)の下位(かゐ)に就(つき)て其(その)禍(わざはひ)を避(さけ)玉はゞ  朝家(てうか)の幸福(さいはひ)何事(なにごと)か是(これ)に過(すぎ)候べき。伏(ふし)て願(ねがは)くは某(それがし)が微情(びじやう)を察(さつ)し給へ恐惶(きやうかう) 稽首(けいしゆ)とぞ書(かい)たりける。菅公(かんこう)清行(きよゆき)が諫書(かんしよ)を披見(ひけん)ありて其(その)深情(しんじやう)を怡(よろこ)び給ひけれ