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しは你(なんじ)なりと慥(たしか)なる訴人(そにん)あり。你(なんじ)身(み)に覚(おぼへ)ありやと糺問(きうもん)せられければ。八郎 少(すこ)しも動(どふ)ずる色(いろ)な
く。是(こ)は思(おもひ)もよらぬ御掟(ごでう)かな。某(それがし)旧(もと)は盗賊(とうぞく)の業(わざ)をなし候へども。観音寺(くわんおんじ)の長老(てうらう)の教化(きやうけ)に
預(あづか)り先非(せんひ)を改(あらた)め君(きみ)に御 奉公(はうこう)いたし。過分(くわぶん)の御扶知(ごふち)を頂戴(てうだい)仕(つかまつ)り候へば。何(なん)の不足(ふそく)有(あつ)てか
君(きみ)の御秘蔵(ごひさう)の武器(ぶき)を盗(ぬす)み候べき。もし財宝(ざいほう)を得(え)んと欲(ほつ)し候はゞ。富有(ふゆう)の民家(みんか)へ忍(しの)び
入て思(おも)ふ侭(まゝ)に盗取(ぬすみとら)ん事いと易(やす)く候へども一旦(いつたん)非(ひ)を改(あらため)候上は。偸盗(ちうとう)の業(わざ)は敢(あへ)て仕(つかまつ)らず候
と明白(めいはく)に陳謝(いひひらき)しけるにぞ。継縄(つぐなは)さも有(ある)べしと思(おも)はれけれども。彼(かの)訴人(そにん)が申 所(ところ)も拠(よりところ)なきに
あらずとて。八郎を留置(とめおき)数人(すにん)の武士(ぶし)を八郎が部家(へや)へ遣(つかは)し。器物(きぶつ)どもを尽(こと〴〵)く捜(さが)し撿(あらた)
めさせしむるに。果(はた)して冑(かぶと)を裹(つゝみ)し絹(きぬ)太刀(たち)の袋(ふくろ)など有(あり)けるゆへ。即(すなは)ち取(とつ)てかへり継縄(つぐなは)に呈(てい)
しける継縄(つぐなは)駭(おどろ)き斯(かく)ては訴人(そにん)の申 如(ごと)く八郎が盗取(ぬすみとり)しに疑(うたがひ)なしとて。帷幕(いばく)の蔭(かげ)に力士(りきし)。
を隠(かく)し置(おき)偖(さて)安達(あだち)を呼出(よびいだ)し。右の証迹(せうぜき)を出(いた)して詰問(きつもん)せられければ。八郎大いに駭(おどろ)きし
体(てい)にて赤面(せきめん)し。いふ詞(ことば)もなくさし免首(うつむき)けるにぞ。継縄(つぐなは)扇(あふぎ)を投(なげ)て相図(あひづ)をなしけるに。幕(まく)の