翻刻
/主田(もちだ)《割書:主田盤先祖の廊所|付置たる田なり》の/祖(ねんぐ)をもて賑ひける。冨人どもこ連を見/倣(なら)ふ
て。/争(あらそふ)て粟越出しけ連ば。/全活(たすかる)るとの/衆(おほ)しと也。〇宋の仁家
の時。/扈称梓(こしよう志)州の/轉運使(そうぶぎやう)たり。歳大尓飢て。道尓/殍(うへ志ぬる)もの多
かりけ連ば。先その/禄米(ちぎやう)越出して。民を賑ひける尓。/冨家(か年もち)/大族(ぶがん)
ども。みな米越差上んこと越願ひ出て。/全活(たすかる)もの数萬人なり
しかば。仁家/勅(ちよく)を/降(くだ)して/奬諭(ほうび)ありき。〇又富人の力をかる尓。
一ツの仕方あり。宋の/杜絋(とくわう)。永平の令たりし尓。民とも他へうつり
行んとせしかば。/父老(としより)どもを/召(め)して。/諭(さと)していへらく。この方/汝(なんぢ)
/等(ら)が在所を立さらぬ様尓致春手立盤なかれど。もし/留(とゞま)り
居ば汝等を/餓(うや)しはせじと申け連ば。みな命尓従ひぬ。そこ尓
て多く/券(志やうもん)をかき。/印(いんぎやう)をす扁く。めい〳〵尓/繕(わた)し。所の/豪家(ごうか)尓て
/称貸(かりとゝのへ)志む。/豊熟(できよく)は/督償(とりたてつくなは)ん登/約(やく)しけ連は。豪家とも/畏(かしこま)り
ける。民みな食越得て/徙(うつる)るものなし。明年/稔(てきよか)りしかば。間違
なく/償(つくな)はせける。民ども甚だ徳とせし也。
〇御春くひ/普請(ふしん)の事
大饑の節。窮民ども渡世のわざをすること阿多は須。此時こそ
やむを得ぬ普請を取り行ふべし。さす連は/窮民(きうみん)どもは。/力作(ひよう)
をもて渡世し。上尓も利を/興(おこ)須事な連ば。/一挙両得(いっきょりやうとく)といふ
扁し。但城郭屋敷などの/修復(しやふく)盤。材木な登多く入のみ尓て。
《割書:贈補 丙申のとし|尓盤府下の冨民》 《割書:夫々すくひあり|け連ば。/一揆囂(いつきがう)》
《割書:ども。天明尓古り|し尓や。おびたゞ》 《割書:/訴(そ)盤か川てなか|里き》
《割書:しく。救をいだし。|国々尓も見習ひ。》