翻刻
/蒸(む)し/熟(じゆく)して食ふ。流水尓徒希て/一宿(ひとよ)おけは。一度/煮(に)てもよし
といへり。/能煮(よくに)て流水尓徒希ば猶以よかるべし」/夏枯草(うこさう)。民
間尓うばのちといふ。/灰湯(あく)尓て能く煮。/二宿(ふたよ)不ど水尓/漬(つけ)置て
後食ふべし。秋になり/枯葉(か連は)尓なりたるも。/粮(かて)とし食する耳
よし登いへり。/山居貧(さんきよひん)民の傳なり。/試(こゝろみ)用ふべし」/萑麦(ちやむぎ)。/向井(むかい)
/元升(がんせう)いはく。二月頃初生の青葉を採り。/汁(しる)を/搗(つ)きて。/米粉(こめのこ)
尓/和(ま)ぜて。/餅(もち)尓/蒸(む)し食春連ば。香味甚よし」/山蒜(のびる)。上州七日
市の人語りける盤。上州の/方言(く尓ことば)尓うしひるといふ。/凶年飢(きゝんどしうへ)を
救ふ尓甚宜しきもの也。我国尓て/邑長(むらやくにん)。年ごとに豊凶越
考へ。凶年に盤各我/支配(しはい)へ/絇(婦)れて。農夫貧冨とも尓。山野尓
出うしひるを堀。煮て食はしむ。もし冨民うしひるを食せ須。
堀尓出さる者あ連ば。/邑長(むらやくにん)その者をさとしおしへ。今汝幸に食餘り
阿連と。/頻年(とし〴〵)飢饉ならば。汝とても餓死越のがるべから須。今より
食物越倹約し。麦熟するまて盤。山野尓出うしひるを堀り
食せよとて。惣村一同尓出てうしひるを堀り。釜尓入連煮る
な里。冨民盤一人つゝの手前尓て煮。貧民盤薪の/貯(たくは)へ少き
故。二人三人或盤五六人寄合て大釜尓て/煮(尓る)なり。此物久しく
煮さ連ば。/麻渋咽(ゑごくしてのど)を/戟(さ)須。六時不ど煮連ば食しや春し登
いへり〇薩藩の成形図説尓曰。長路軍行等尓。食せ須して
飢ざる法。串柿を糊のごとくして。蕎麦粉を等分尓雑合て。
右ページ二行目左ルビー 「夏枯草 うつぼぐさ」