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コレクション: 養蚕の書

蚕養御由来記 - 翻刻

蚕養御由来記 - ページ 6

ページ: 6

翻刻

我朝え蚕開けしと云也恐れ多くも御殿の御粧ひを申奉 るに言葉にも尽し難し銅(あかゞね)をもつて築地をつき池には 瑪瑙(めのう)の石を畳み金の垂木まにの玉を錺(かざ)り壁は《振り仮名:浄■梨|しやうはり》【注】 扉(とびら)は金銀/瑠璃(るり)のこふしに紫金(しこん)を交(まじ)へ絵かくには画図(ぐはと)を 尽し玉の簾(すだれ)錦の帳種々の華縵(けまん)をかけ枕(まくら)は珊瑚樹(さんごじゆ) 珠座は珠玉金銀を鏤(ちりば)め庭にはとこしなへに四季を尽し 国土の諸木名花を植池水には三伏の夏をわすれたり □□【凡心】の巧(たくみ)に求め尽さずと云事なししかのみならず億(おく)千の 蔵あり珠玉金銀の瓔珞(ゑうらく)を以其身を荘厳(さうごん)し栴檀(せんだん) 沈(ぢん)水の薫(かほ)り殿中に充満(みち〳〵)たり 則かくのごとくの御屋形に御座在(おはします)霖夷大王也御 妃(きさき)に光契(くはうけい)夫 人(じん)と申奉る御姫君には金色蚕姫と申て我朝え蚕御始め 給也或時光契夫人と申奉御妃悩ませ玉ふ事次第に重らせ 玉ふて普天卒土(ふてんそつと)の神祇(じんぎ)を行ひ玉ひ医療(いりやう)を尽といへとも 自業自得(じごうじとく)の病ひなれば終に空しくならせ給ふ大王を始め奉り 公卿(くきやう)殿上人内殿外殿の臣下を始め百官六位に至るまて 愁傷(しうしやう)の袖をかざし姫君も御/歎(なげ)き悲(かな)しみ玉へ共其甲斐もなく 月日を送り給ふ霖夷大王には妃渡らせおはしまさではとて 毘舎離国の王より大液(たいゑき)夫人と申御姫君を妃に御むかへ 参らせける大王にも古(いに)しへ皇后の如くには思召さず 【注 ■は「皮+艮」・「頗」ヵ】