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コレクション: 養蚕の書

蚕養御由来記 - 翻刻

蚕養御由来記 - ページ 8

ページ: 8

翻刻

玉ひて此度は内裏より遥(はるか)程遠き山あり是も国の傍(かたわら)也 鷹群山(ようぐんざん)と云山なり又官人に課(おゝ)せて流さるゝ彼山高く 険阻(けんそ)【注】の山なり春夏秋をしらず雪降山なり鷲(わし)鵬(くまたか)の多 かりきゆへに鷹群山とはたかむらがる山と人云也この山にも 月日をおくり木の根を枕に苔(こけ)を袵(しとね)として露霜雪を襖(ふすま)とし 明し暮し給ふ是も鷹共参りて食事を与(あた)へ奉るかゝる処に 帝(みかど)より鷹をうたせに多くの兵を遣はさる渠等(かれら)山へ分入り 数の谷峯を登る然るに至ればある木の本に容顔美麗(ようがんびれい)の やさしき姫宮渡らせ給ふ能々見奉れは我主君の姫宮也 急(いそ)ぎ申上奉る何としてかゝる恐しき処へ行幸(みゆき)ならせ 玉ふぞと申ければ我は継母の□【所】行に依て此山え流さるゝ也と宣(の玉)へば みな〳〵御 痛(いた)はしく思ひ鷹をばとらずして都(みやこ)へ御 連(つれ)帰り 帝え斯と奏聞(そうもん)申奉れは御悦ひは限りなく其後は別に宮を 造(つく)りて居置(すへおき)給ふ妃猶憎き事に思ひ其後は遠き島へ放され畢 □【彼】島は海岸(かいがん)山とて地ゟ抜群(ばつくん)隔(へた)て程遠き島也 船路(ふなじ)三日 □□【計り】也此島には木竹苔の類なくかしけたる巌(いはほ)のみある斯(かゝ)る 所に月日を送らせ玉ひて久しく住給ふ或時釣の小舟風に 吹放されて島の辺え舟ゟ上り此姫宮を見奉りて御痛はしく 思ひ奉り我舟に乗せ参らせて本国え帰り内裏に移し奉り 其後は公卿大臣□□【日番】を盛んにして守り申されけり夫より 【注 「険阻」の原文は「𡸴岨」】