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コレクション: 養蚕の書

蚕養御由来記 - 翻刻

蚕養御由来記 - ページ 9

ページ: 9

翻刻

恙(つゝが)なくおはしまし斯て永しく被為成給ふ程に或時国の王え 東宮の妃に立せ給ふべき其聞へゆゝしかりける事共也帝の御政道 強く遊しませは姫宮をゆるかせに申事もなく或時大王御遊山の為に 遠き国え行幸被為成給ふ事あり還幸(くはんかう)十日斗り件の妃御留 守を能(よき)事に思ひ給ふて六位と云者を召て宣ふ様 汝(なんじ)を深く頼(たのむ)ぞ 清涼殿の小庭え七尺程の穴を掘て得させよとあり六位へ勅諚(ちよくじやう)を蒙り 庭の□を弐間斗に七尺の穴を掘立たり彼妃の仰には汝東宮の金色 姫を搦(から)め突埋(つきうづ)めろと宣ふ六位も悲しき事に思へ共力及ばずあやなく 姫君を生捕(いけどり)穴え突埋め己れ等はちり〴〵に成て世を捨山え入り 墨の袖に身をなし彼御 菩提(ぼだい)を弔(とふら)ひ奉ると也妃の宮は世に思ふ事 なといへ共後にぞ思ひしられけり斯て十日斗して大王は他国より還御(くはんぎよ) ならせ給ふて姫宮の事を御尋有しか誰知たるといふ者もなく東宮の 御所え入御し玉ひて叡覧(ゑいらん)ありいつより御顔ばせ勝るらんかみ?きひて人も なし近き方の女房采女え御尋ね給ふといへ共知奉るといふ者なし 大王御難き御涙千行也余りの御悲しみに大王には清涼殿え 行幸あつて花置山を御眺め一方ならぬ御思ひに御 泪(なみだ)に臥(ふ)し沈(しづ)み給ふ 打しほれておはしけり公卿大臣も感涙(かんるい)を催(もよふ)し誰もの云者もなく陰に 閉(とぢ)て居給ふ処に清涼殿を照す事あり其光り恰(あたか)も旭(あさひ)の昇(のぼ)るかことく也 帝 怪(あや)しく思召て博士(はかせ)を召て占(うらな)はせられ給ふ博士の曰此地の下にいかさま人あり又 鬼神魔王の居る処か地ゟ七尺 底(そこ)に化したる者あるへしと占ひ居出せば