翻刻
【欄外】
手引草 上 をはり
【右丁】
男子(なんし)背中(せなか)に蚯蚓(みゝづ)のやうなる赤(あか)き筋(すぢ)ふくれあがりありけりこれ
蛇(へび)にあやかりたる也又一ッこゝろえべきははら帯(おび)をつよく〆(しめ)ざれば
胎内(たいない)にて子そだちすぎて産(さん)のときむづかしといふ説(せつ)あれども
子(こ)は天成(てんせい)にてうまれることゆゑはら帯(おび)しめずとも育(そだ)ちすぎる
ことなしほどよく〆(しめ)て心(こころ)を養(やしな)ふべしと産療(さんれう)要摘(えうてき)といふ書にみえたり
○さて腹中(ふくちう)の機関(からくり)おほかたは右 条々(でう〳〵)のごとし是(これ)みな書(しよ)物(もつ)に
あることにて古人(こじん)の説(せつ)なり養生(やうじやう)するにはまづはらの中のことを
しらずんばあるべからず然(しか)るに養生の書(しよ)あまたあれども
腹(はら)の中(なか)のことをいはざるゆゑ書(かき)加(くわ)へたるははらの中のことを知(し)ら
ずして不養生(ふやうじやう)をする人の為(ため)ぞかし
【左丁 六玉川の歌の扇絵】
【一段目】
山城玉川
駒とめて 猶水かはむ 山吹の 花の露とふ 井出の玉川【注①】
【二段目右】
紀伊(きい)玉川
わすれても くむやしつらん 旅(たび)人の 高野(かうや)のおくの 玉川の水
【二段目左】
武蔵(むさし)玉川
玉川の さらす調衣 さら〳〵に むかしの人の 恋しきやなそ【注②】
【三段目右】
摂津(せつつ)玉川
松風の 音だに秋は さびしきに 衣うつなり 玉川の里【注③】
【三段目左】
陸奥(むつ)玉川
夕(ゆふ)ざれば 汐(しほ)かぜこして みちのくの 野田(のだ)の玉川 ちどりなくなり
【四段目】
たづねこん 野路(のぢ)の玉川 萩うゑて 色なる波に 月やすむらん【注④】
近江(あふみ)玉川
【注① 別歌 蛙なく井手の山ぶきちりにけり花のさかりに逢はましものを】
【注② 別歌 玉川にさらす手作りさらさらになにぞこの児のここだかなしき】
【注③ 別歌 見渡せば波のしがらみかけてけり卯の花咲ける玉川の里】
【注④ 別歌 明日もこむ野路の玉川萩こえていろなる波に月やどりけり】