翻刻
【右丁】
書(しよ)にもいへり変生(へんじやう)男子(なんし)の禁厭(まじなひ)又は胎内(たいない)の子の男女(なんによ)を知(し)る目利(めきゝ)
のことなど末(すゑ)の附録(ふろく)にしるせり
○こゝに又 婦人(ふじん)の心得(こゝろえ)給ふべき事ありおよそ子が胎内(たいない)にあるうち
蹲居(うづくまりゐ)て生(うま)るゝ時子がへりをすると古(ふる)く医書(いしよ)にもありて世間(せけん)の普(あまね)き
説(せつ)なれども産療(さんれう)の名医(めいい)香(か)川 先生(せんせい)年来(ねんらい)数(す)百人の産婦(さんふ)をあつ
かひ経験(ためし)みたるに子 胎内(たいない)にあるは逆(さかさ)になりて居(を)り生(うま)るゝ時は其侭(そのまゝ)
頭(かしら)より生(うま)る子がへりといふはけしてなきこと也と自(みづか)らあらはしたる書(しよ)に
いへり此 説(せつ)蘭書(らんしよ)解骵(かいたい)の説に符合(ふがふ)して古今(こゝん)未発(みはつ)の妙(めう)説なり
と静(しづ)の石屋(いはや)にもみへたり○さておほかたの人おもはんにはよしや
名医(めいい)の説(せつ)なりとも人が逆(さかさ)に育(そだつ)ことがあるものかといはんもさること
【左丁】
ながら人が人を生(うむ)は天地(てんち)の精(せい)なりおよそ草木(さうもく)の種(たね)を地に蒔(まき)
ばまづ根(ね)ができて二葉(ふたば)を生(しやう)ずるは松(まつ)も梅(うめ)もおなじことなり二葉 出(いで)
てより生(を)ひのびて枝(えだ)をなすこれ地の地の陰(いん)より天の陽(やう)にしたがふ
ゆゑ也人の頭(かしら)は根(ね)也頭いできて手足(てあし)の枝(えだ)を生(しやう)ず是(これ)は半産(はんさん)を
見てたしかなること也 胎中(たいちゆう)に子あるは蒔(まき)おろしたる草木(さうもく)のごとし
頭(かしら)の根(ね)を下にしてさかさま手 足(あし)のできるは天地の気(き)によるの故(ゆゑ)
なりうたがひまどふべからず○又一ッ婦人(ふじん)の心得(こゝろえ)あり懐妊(くわいにん)したる
後(のち)はすべて物(もの)の 怪(あやしき)を見るべからずわろくすると其(その)物 胎内(たいない)の子
に傳象(あやかる)ことあり我(わが)親(した)しき人の娘(むすめ)はら帯(おび)したるのち飼猫(かひねこ)ちい
さき蛇(へび)を咥(くわ)へて座(ざ)しきへ来(きた)りしをみておどろきしが産(うまれ)たる