翻刻
【右丁】
効(しるし)あること妙(めう)なりその後(のち)医書(いしよ)の素問(そもん)をみれば粗(ほぼ)此術(このじゆつ)に似(に)たる
ことあり按(あん)ずるに吸霞(すゐか)の術(じゆつ)の根元(こんげん)は素問(そもん)より出たるなるべし板本(はんほん)に
あるを元(もと)とすれば一家(いつか)の秘伝(ひでん)とはいひがたし覚斎(がくさい)世(よ)にあらば論弁(ろんべん)
すべけれど今は世(よ)になしおのれ今(いま)神文(しんもん)に叛(そむい)て此術(このじゆつ)を書(かき)あら
はす神罰(しんばつ)は我(われ)一人に帰(き)すべけれど此書(このしよ)をみて此 術(じゆつ)をおこなひ
養生(やうじやう)に効(しるし)ありて天寿(てんじゆ)を延(のば)す人(ひと)あらば覚斎(がくさい)がいひしごとく
仁(じん)をほどこす一端(いつたん)ともなりなんかしとて書(しよ)にあらはし侍る也けり
○吸霞(すゐか)の傳(でん)の循則(しかた)
天気(てんき)晴(はれ)て一点(いつてん)の雲(くも)なく風(かぜ)もなき日(ひ)旭(あさひ)のぼりて四ッ比(ごろ)までの
内(うち)口(くち)を清(きよ)め茶碗(ちやわん)か猪口(ちよく)なりとも清(きよ)めたるに水(みづ)を入(い)れ何(なに)なり
【左丁】
とも人の踏(ふま)ざりし台(だい)めくものへのせたるを身(み)のまへにおき顔(かほ)へ日輪(にちりん)の
光(ひかり)をうけて尻(しり)を居(すゑ)足(あし)をひらきてかの静坐(せいざ)に居(すは)りまづ日輪(にちりん)を
拝(はい)し指(ゆび)を組合(くみあは)せて膝(ひざ)におき目(め)をとぢ小腹(こはら)を張(はり)て気海(きかい)丹田(たんでん)へ
神気(しんき)をよく〳〵おちつけ頥(あご)をさげて息(いき)を細(ほそ)く吐(はき)出(いだ)す是(これ)仙術(せんじゆつ)に
所謂(いはゆる)死気(しき)を吐(はく)なり▲さて顔(かほ)をあげ口(くち)を開(ひら)き大陽(たいやう)のたちのぼる
朝日(あさひ)の光(ひか)りを吸(す)ひ気海(きかい)丹田(たんでん)へ呑(のみ)おさめる心(こころ)もちにして小腹(こはら)へ
力(ちから)を入(い)るべし是(これ)所謂(いはゆる)霞(かすみ)を嚥(くらふ)なりかやうにすること三十 遍(ぺん)以上(いじやう)
心(こころ)にまかすべし前(まへ)におきたる水(みづ)は一ㇳ口(くち)なりとも呑(のむ)べし日(ひ)の陽(やう)に
水(みづ)の陰(いん)を配偶(はいぐう)するゆゑなり天気(てんき)だによければ毎朝(まいてう)行(おこな)ふべし十
度(たび)ほどにいたらば元気(げんき)精健(せいけん)の増(まし)たる効(しるし)をしるべし度重(たびかさ)なれば
【欄外】
四十五