翻刻
【右丁】
食(しよく)の消化(こなれ)よくして食(しよく)すゝみ二三 里(り)の道(みち)にはくたびれをおぼへず
物(もの)にたいくつせず常(つね)よりは心(こころ)朗然(ほがらか)なること京山 経験(ためし)見(み)て申ㇲ也
▲右のごとく日(ひ)に水(みづ)を供(くう)ずるはまへにもいへるごとく日陽(にちやう)へ水陰(すゐいん)を
配供(はいきよう)するの心なれば貴人(きにん)はいかやうにもうや〳〵しくなし給ふべしさて
又 軽(かろ)き人(ひと)は住居(すまゐ)によりて日(ひ)の光(ひか)りの十分(じふぶん)に入(い)らざるもあるべし左(さ)
あらば日(ひ)のかげのちかき所(ところ)にて日(ひ)の方(かた)へ対(むか)ひて件(くだん)のことくなすべし
日陽(にちやう)はいづれのくま〴〵にもいたらざる所(ところ)なきゆゑ陽気(やうき)を吸(すふ)はおなじ
事(こと)なりされどたとへていはゞ薬(くすり)の一ばんせんじ二ばんせんじのごとし
○益気(えきき)の傳(でん)
これは西土(もろこし)の書物(しよもつ)の《割書:○》傳家宝(でんかほう)に見(み)へたる傳(でん)也 朝(あさ)起(おき)たる時 静(せい)
【左丁】
坐(ざ)し両手(りやうて)を摺(すり)あはしてあたゝめ目(め)を閉(とぢ)て面(かほ)を擦(さす)り目(め)のめぐり耳(みゝ)の
めぐり襟頥(えりあご)のめぐり剃髪(ていはつ)の人は頭(つむり)をもいくたびとなく撫擦(なでさすり)両(りやう)
腕(うで)をもなでおろしさて目(め)をひらけば精神(せいしん)清朗(はつきり)となること即効(そくこう)
あり是(これ)気(き)を益(ます)の良法(りやうほふ)なり朝(あさ)のみにはかぎらず眠気(ねむけ)いくか又は
物(もの)に退屈(たいくつ)して気(き)鬱(うつ)したる時(とき)かやうにすれば元気(げんき)を引(ひき)たつる事
妙(めう)なり此(この)書(しよ)を読(よみ)給ふ御 方(かた)も試(こゝろみ)に目(め)をとぢ目(め)をさすり目(め)をひらき
て見(み)給へ眼力(がんりき)をやしなふ即効(そくこう)をしるべし○又 目(め)のくたびれたる時
栂指(おやゆび)の爪(つめ)の甲(かう)を舌(した)にて舐(ねぶ)り目(め)のまはりを拭(ぬぐ)ふ事二三 度(ど)にいた
れば眼力(かんりき)を強(つよ)くすること妙(めう)なりこれは医書(いしよ)に見(み)へたり
○長生壷(ちやうせいこ)