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れども頭をあげ四方の香をかぎて用心するが故に害を遁るゝ事
多し又弱きけだものにも限らず猛き類ひに至るまでも用心をば
する者也熊はをのれが拪家に帰る時近くなりてよりあふのきになりて
すり入といへり是人に足跡を見せじが為なり獅子王も己れが拪家を
出入する時人其の足跡をつなぎて住所を知らん事を恐れて其辺を
縦横にありきて行さきの知れざる様にすると也象に付てそりいの
といふ人のいへる事あり猟師象牙をとらんとて象をかりする時象は
漁師に追れて遁れがたければみづから牙を打折て狩場に捨ると也
是人のわれを害せんとするは只牙を好みて我を憎むに非ざれば牙を
与へて身を全ふせんといふがことしせいらんといふ嶋に毒蛇あり人是に
喰はるれば十二時を過ずして死する也又此嶋にいたちのごとくなる小獣
あり彼蛇是を喰て餌食とす小獣此害を遁れんが為に己れがすむ穴の
入口を広くし出る口を狭くす蛇に追るれば広き口よりにげ入て狭き
口より出る也蛇つゞひて其穴に入るに狭き口につまりて出る事を得ず
小獣跡に廻りて毒蛇を二ッに喰ひ切て殺し其災ひを脱るゝ也又如何
程小さく賤きものとても仇を遁るゝ道を御作者より与ヘ玉はぬは
なし蝸牛の上を見よ彼は眼を持ざればゆくさきの難易を見る事
【枠外右 十五ケ条】