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道具を持ざるは稀なり若敵を制する道具なければ或は其身速疾に
して災ひを遁れ或は身を隠す才覚奇妙にして命を全ふする者也兎は
犬の追かけ来るに逃のぶ事叶ざれば跡足にて𡋯を蹴立て犬の眼を
昧ます也又兎の鷲鵰にとられんとする時跡の二ッの足にてすぐに
たち耳を峙て身の長を高くなして待ゐる所にわし鵰是をとらんと
おろし合すれば兎忽身をちゞめてわしをあまし其の隙ににげさる也
又万の鳥の鷹にあふ時の分野を見よ鷹を合する時鳥は死すべき事を
悲みて声をあげて鳴もありにげんとするに身重くしては叶はじと
啄たる餌を吐出すもあり隼【注】を鷺に合する時鷺は飛去事叶ざれば
くちばしを上になして下し合する鷹を貫かんと待居也鷹も逸物
ならざれば胸をつかれて死する也又沢水淵川などのあるを見れば
精を尽して其かたへとび行事是鷹の水に恐るゝといる事を知が
ゆへ也べるぢすといふ賞翫の鳥あり鶉雲雀等のごとく叢に住なり
とび来て巣に帰る時は先遠き所の地に下りて草の中を伝ひ行て
巣に入者也是巣のあり所を人に知れじが為也惣じて弱き禽獣をば ds
多分は臆病に作り給ふが故に用心深く身を謹む事即敵を防ぐ
道となる也喩へば鹿は臆病なるによて深山叢樹にのみ住て事なけ
【枠外左 初巻四十】
【注 「隼」は「鷹」の誤ヵ。】