翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

新竹斎 5巻 - 翻刻

新竹斎 5巻 - ページ 16

ページ: 16

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の者(もの)鮎(あゆ)といふ魚を売(うり)に夜通し京にのぼる去年(こぞ)の 夏にや例の魚篭(あじろ)をになひてたゞ一人行けるを。山だち三 人取こめてたゝきころし古き単(ひとへ)をはぎて帰りぬきう所(しよ) をいたううたれながら片息(かたいき)残て道行(みちゆく)人に始終(しじう)をかたり 終て死す。誠(まこと)に物には事毎(こと〳〵)心をつくべき事に侍り。 此男道のたくはへにやき飯(いひ)三つ三尺帯につゝみ。こしにつ けたるを。いかさま金銀(きん〴〵)の類なるが。魚荷(うをに)にさまかへて京 に出るよと推して命(いのち)をとりし物とぞ。その者(もの)のなき あとのしるしゑかうして御 通(とを)りあれと語る。げにあるべき 旅途(りよと)の心得かなとて筍斎   鮎(あゆ)うりのかたちは鮓(すし)に埋(うづも)れて五輪をつみしつか原のさと 猶くつかけのさとをこえて。やう〳〵いそけばかめ山の酒(さか)やに 尋入ぬ。亭主(ていしゆ)出むかひ悦(よろこぶ)暫(しはし)休(やすみ)て病人(ひやうにん)を見る。父母(ちゝはゝ)先心もと なく病性(ひやうしやう)をとふ。疳(かん)でごさると。かんは五疳(ごかん)とかや承(うけたま)る。何と 申かんでかさるといへば。いかにも五(いつ)色有皆むつかしひ性(しやう)なれど。くる しからぬ。昔天子の五色(こしき)の疳(かん)を一 度(ど)にうけ給ひて。しかも つかへがありしかと。長生あそはしたる例(ため)しがある。是は終(つゐ)にきゝ 及ばぬいづれの御代の事におはす。御存あるまひ。是はもろこし ごかんのみかどにつかへ奉るといふが其事に侍るといへば。亭主あ きれながら。五かんは何々ととへば。筍斎目をすがめ。五かんは先 やうかん。らくがんみつかんの類(たぐい)。皆くひ物の過てより出る。是のは 酒かんといふて。酒のかんか。あたつて出たる也。といへば。亭主(ていしゅ)聞て我