翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

新竹斎 5巻 - 翻刻

新竹斎 5巻 - ページ 25

ページ: 25

翻刻

よと笑(わらへ)は筍斎ちやくと拵(こしらへ)て辛崎(からさき)へ裸(はだか)代参(だいまいり)御きねん御き たうの灯明銭(とうみやうせん)上られませいと罵(のゝしり)行ば。左(さ)もある事かとみな思ひ ゐぬ十町計行は。左(ひだり)につきて安祥寺(あんじやうじ)の入口あり。並木(なみき)のさくら ちもとをわけて山 路(ぢ)に入事又五町計。筍斎 漸(やう〳〵)其 家(いゑ)に入 てねめ介ゆへを語(かた)るにぞ。亭主(ていしゆ)笑止(せうし)がり。先 肌(はだ)を隠(かく)すほどの 着(き)物をあたふ昼(ひる)は人めつゝまし。けふは爰(こゝ)に居(をり)てくれに京へい なんと心ならずゐれは。所(ところ)からして菜飯(なはん)など調(てう)じもてなす筍さい   なも大 根(こん)もかれぬとおもへは といひて此 上(かみ)の句いかゝととふねめ介   山さとは冬(ふゆ)ぞひもじさまさりけり とつけて笑ふ。誠(まこと)に此 里(さと)にての事かとよ田村(たむら)の御かどの女御(によご)たか きこのみわざしける時。人々の捧(さゝげ)物山も更(さら)に堂(どう)のまへに動(うごき)出 たるやうにとあるが。我らはたゞめぼしの花ならではとつぶやく。 やゝ暮(くれ)におよへば。主(あるじ)に暇乞(いとまこひ)て京に帰にけり。去ほどに命(いのち)をか けし薬箱(くすりばこ)はとられつ。薬料(やくれう)は一 銭(せん)もなし。いかゞはせんといふ所 に。門(かど)をたゝ〱。又ぬす人よあくるなととがむれば。戸(と)たゝきたる 計(ばかり)にて人 音(をと)はせず。恐(をそろし)ながら。そと開(ひらけ)は人はなくて夜部(よべ)とら れたる薬箱(くすりばこ)あり内に入(いれ)てみるに薬は其 侭(まゝ)によき物(ものは)皆(みな)取て状有   昨夜(さくや)は初(はしめて)て推参(すいさん)いたし御ちさう大 酒(しゆ)忝(かたしけなく)候 殊(こと)に色(いろ)々 引出物(ひきでもの)   過分(くわぶん)に候御 影(かけ)にてとんよくの病(やまい)を治(ぢ)ししんいの大ねつさめ  申薬はこ返進(へんしん)申候以上         月日      虚空(こくう)強(かじ)右衛門      薮(やぶ)の内竹斎老    無天(むてん)盗(とう)左衛門