翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

新竹斎 5巻 - 翻刻

新竹斎 5巻 - ページ 6

ページ: 6

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くかたるをねめ介さゝやきてむさとしたる事な仰(おほせ)て。あの 武士(もののふ)は平(たいら)の忠盛(たゞもり)こなたは当社(とうしや)の承仕法師(じやうじほうし)。昔(むかし)白河(しらかは)の院(ゐん) の御しのひの御幸(みゆき)ありし時。かう〳〵の事ありて抱(だき)とめたる 図画(づぐわ)とこそ申候へ。ようにも人の聞(きく)物をといへば。筍斎(しゆんさい)ぬから ぬがほで。まことにいかにもこなたは忠(たゞ)もり。されば上(うへ)なき酒 のみにてありしと。あるふみに   今(ま)一 杯(はい)たゞもりたらぬさるへいじくだけて物を思ふかはらけ と口かしこくいひて立のけば。ねめ介も腹(はら)かゝへ行(ゆく)。南(みなみ)にいてゝ 石の鳥居(とりゐ)。左(ひだり)につゞきて双林寺(さうりんじ)高台寺(かうだいし)右に歩(あゆみ)て安井(やすい)の御 堂(どう)に入 藤(ふぢ)杜若(かきつばた)はまだ色(いろ)なくて。さくらは雲(くも)とあらそふ。筍(じゆん)さ い。まづ火桜(ひざくら)によりてたばこたうべんといへば。ねめ介しほ がまにむかひて。せんじ茶(ちや)ひとつといへど花(はな)ものいはず笑(わらひ)も せず。爰(こゝ)を見 過(すぐ)して。庚申堂(かうしんとう)に出。三 申(じん)のあかき顔(かほ)に 酒のなつかしさ添(そへ)。つみつくる折しも。左右(ひたりみぎ)のすだれより。な まめける女の我しりがほにさしまね〱に。おもほえず風に なび〱ふじやといふのんれんの内に入ぬ。あるじの女 房(ほゞう)傍(そば)へ ゐよりてお雪お茶しんじましやといふもにくからず。富士(ふじ)に 雪心ありげなる名(な)にこそあれと思へば。くゆるきせるのけふり 迄(まで)よそに替(かは)りておもしろう立行は。我心のうかるゝゆへに や御 茶(ちや)あがりませとさし出す茶(ちや)はふるし水たうべんと いへば。扨 気精(きじやう)のつよひ事かなといふ〳〵もて来(く)る。波間(なみま)にかづ 〳〵あまならで天目(てんもく)引うけいきもつぎあへすのみて