翻刻
者の批言ありと。其批(ひ)のとまるやうに。ひとまる一 味(み)つらゆきは貌(かほ)に
雪のかゝる心。面(おもて)白(しろ)ふなるやうにと。乍(さり)_レ去(ながら)雪は大 寒(かん)の物なれば。温(うん)
薬(やく)にて大(おほき)に和(やわら)けんため。あか火とを少加へよし。扨なにはづのこと
の葉のみつ丸にして用(もち)ゆべしと也。若(もし)夫(それ)にて治(ぢ)せずは。廿一
代集(だいしう)を煎(せんじ)のみ給へと云。男おかしながら是又 子細(しさい)いかにととふ。
されば巻(まき)ごと歌道のせんやくならずといふ事なし。是み給へ
とて。忠度(たゞのり)のうたひ本を繰(くり)て。五条の三 位(み)俊成(しゆんぜい)の卿(きやう)承(うけたまわつ)て是を
せんずとあれば。忝も天子などには公卿(くぎやう)に煎させてきこしめす
事じやと云にぞあきれはてゝ帰る。又ある理尽者(りくつもの)筍斎に手をと
らせんと。一 分(ぶ)自慢(じまん)に謎禁好物(なぞきんかうもつ)といふ物を作(つく)り。かな違(ちがひ)重(ぢう)
言(ごん)など取まぜ。子細に書つけ。近比(ちかごろ)むつかしうおはし候はんなれと
随分 工夫(くふう)して此 作(つくり)物を解(とい)て御 越(こし)給はれとさし出す。筍斎
さらりと一 返(へん)みる程に。使者置て参らんといへば。否々是程
の事に何の工夫(くふう)も分別(ふんんべつ)もいらずと片端(かたはし)より一書(ひとつがき)の下(した)に書付る其作物は
謎禁好物(なぞきんかうもつ)
一かたち 鯛(たい) 一春の風 鯒(こち) 一 亀井(かめい)か兄(あに) 鱸(すゞき) 一ひとのみ 鱧(はむ)
一中ひくな女 鮃(ひらめ) 一ひたい綿(わた) 鰻(うなき) 一みやこの魚(うを) 鯨(くじら) 一やくし 鮹(たこ)
一 根引楫(ねびきのかち) 生貝(なまかい) 一 養(やしな)ひ親(をや) 煎海鼠(いりこ) 一やみの夜(よ) 海月(くらげ) 一 寐起貌(ねをきのかほ) 鯣(するめ)
一 近江守(あふみのかみ) 鮒(ふな) 一一 刀(とう) 鯵(あぢ) 一 絃(つる)かけ 鱒(ます) 一《割書:ふたつ文字|牛の角もし》鯉(こい)
一 不動(ふとう) めぐろ 一 餓鬼(かきの)食物(しよくもつ) 鯖(さば) 一切たり突(つい)たり かまほこ 一鳥さし 餅(もち)
一頼光の父(ちゝ) 饅頭(まんぢう) 一 洪水(こうずい) 飴(あめ) 一 小田原商(おだはらのあき)人 外郎餅(ういらうもち) 一つきん 魳(かます)
一やかたの水なし 鰯(いわし) 一 出羽庄司(てわのしやうじ) 砂糖(さとう) 一ちかきあたり そば 一あはうの川がり うどん