← 前のページ
ページ 73 / 104
次のページ →
翻刻
起き上り美服を着飾り香を薫(くす)べさて余に向ひ
死睡せよ死睡せよ汝の睡り終身醒めざれ吾既
に汝を厭へりと數遍繰り返し室を出で去りた
る時余も亦直ちに飛び起き手早く衣裳を引き
披(かけ)劍を提げ足を極めて逐ひかけしかば忽ち前
面に履響( |くつのおと)聞へたり近付ひて悟られじと是より
歩(あゆみ)を緩め見へ隱れに随ひ行くに吾か妻門に至
れば輙(すなは)ち何やらん咒文を唱ふる所忽ち門は左
右に開けたり斯くして數多の門を過ぎ終りに
園門に至る時も亦先の如く咒文を唱へて中に