← 前のページ
ページ 82 / 104
次のページ →
翻刻
け其復讎の成否は期すべからさるも尚ほ一点
の冀望なきにあらざれば僅かに慰むる所あり
て最(いと)賴母敷(たのもしく)覺へ玉ひけり斯くて帝は次の朝。曉
と共に起き出て玉ひ其計を行はんと上袍(うはぎ)を脱
ぎて軽装(みがる)に打扮(いでた)ち時を計り墮涙廟に至りて見
玉ふに内には數万の白蝋燭の火把( |たいまつ)を尚ほ煌々(こう〳〵)
と燭(とも)し連ね數千個黄金の香爐よりは數千條の
𤇆り上騰( |あがる)し妙香鼻を衝(つ)きたり帝は直ちに進ん
で後堂( |おくざしき)に至り見玉ふに姦夫なる黒奴は唯獨り
死するが如く生けるが如く卧榻に横はり居り