翻刻
と。うちのりてろかいせんどは。なけれ共むかひのきしに。つき
給ふそんじや。ふねゟあがらせ給ひ。あとを三どらいはいし。
すへのぢごくといそがるゝ。いそかせ給へばこはいかに。しやばでも
かくれししでのやま。なんとのぼらんよふもなく。しばしあき
れておわします。しでのやまじのくるしさは。岩やりとうけが
百十丁。このとうげのありさまは。大ばんじやくがはるかちうゟ。
ふりかゝるしやばてたとへて申なら。あき風にこのはをちら
すごとく也。こゝろもことばも。およばれず。もくれんそんじや
のことなればおいのなかよりおんきよをとりいだし。一しやふくとくほん
天【一者不得作梵天】二しやたいしやく【二者帝釈】三しやまいふ【三社魔王】四しや天人【四者天輪】。五しやふんしん【五者仏身】とお【法華経提婆達多品の一節が変化したもの】
ときなされて候へば。こはありがたやちりふるごとくのばんじやくもはる
かちうゟとゝまりて。そんじやはなんなく。こし給ふすへのちごくと。いそ
かるゝいそかせ給へば。こはいかに火ふり峠が百十丁。こゝろもことばも
およばれず。おいの中ゟおんきよを。とりいたしはうとはんにや【方等般若】。だい
はんにや【大般若】やくしのおんきよ【薬師の御経】。十二くわんとなへたまへば。かたじけなや火
ふりとうげのなんもこへ。すへのちこくといそがるゝ。いそがせたまへは