翻刻
愛憐を蒙りて成長したりけるものなれは
祖母と孫との愛情の橋かけ初て終に詫を
そ免し給ふる是を思ふ時は我子を愛
其孫を恵む事の情合子を見る事親に
しかす有かたしといふもまたおろかなるへし
程経て養母も重き病に臥して終に遠に
赴給ふ此時始て看病をもし野辺の送り
をも勤めけれはおのれなからに勧念して
そ勘考しける心には墨染の袖に世のうさ
をおほふといへとも煩脳すてかたく妻子の行先
に迷を尚不顧罪を重ぬる事こそおそろ
しけれ養母のはかなく成給ふ看病の外
孝に似寄たるさまもなけれは自ら改めて名
乗を幸一とす此うへの未熟を世の人にひろめ
未熟を不患して罪を滅し是を子孫の幸
ひにす一ツは万物のはしめなれは幸一