翻刻
響の時を待て参詣群集たる事其例し
今もなほ昔に変る事なし是全神職
血統の修行に寄なるへし尤秘密なれは其
予詳なる事をしらす今の御堂より乾にあたり
箱清水村あり四方は芋井の郷にして一邑の
地中を深田の郷といふ村入のかたはらに十人河原
あり其昔如来誦経の料として深田の郷において
二百石を十二院へ給ふなほその頃は江拾三井
寺の末院たりといふ是なん一山のうち衆徒
なりとかや数百年の星霜を経て十二院は
名のみ残る是を誤て当所の人今呼て十人河原
といふとかや一山四門に勅額あり東門を定額山
善光寺西門を不捨山浄土寺南門を南命山
無量寿寺北門を北空山雲上寺
月かけや四門四州にたゝひとつ はせを翁
既に定額山善光寺は東門にて御堂も東向
なりしを数度焼失あり就中寛永十有
九年壬午五月九日の出火にて町〳〵およひ
御堂類焼す其頃大勧進御方本領上人御方
争論の事ありて仮御堂を御両寺の間に