翻刻
風雅の人なり今に子孫留田氏にて所口にあり又此城
山に享保の頃不思議あり府中村に諸屋兵衛とて大百姓
あり此城山を畠に開事願上則願叶ひて多の者を
登せしに此山に数千年経る槻木ノ大木有此木を伐とせし
其斧の切口より血流出たり杣共恐て伐事あたわす
兵衛此事を聞安からす思ひ此山へ登る半途にて縁
雲かきくもりて兵衛を虚空へつかみ行暫ありて
此山の梺へ落す其骸未■になり死しけり又其夜
大槻木は自然に根返りして倒れけり其槻木今に
根は空へなり枝は地に着て其侭人も辺りへ不寄也
案するに老木を伐に必汗を出す也
其色極て赤し血の如く也とあり又老
木の精あり形ち黒き狗のことくにて
煮て喰ふへし是を彭候(ホウコウ)と号す命
のくすりとあり
又一言の観音とて病難を救ひ給ふ事霊験あら
たなる事あり
此城山の鹿下【麓?】なる■廓へ菊月のすへの