翻刻
又小田中村は高畠へ近し往来の際に新王の塚とて
誠に亀形の塚有往古は此辺は入海の礒辺成しとて
此塚に昔物語あり所に云伝へる任爰に記す也昔此
里に入左近といふ者の子に太郎といふもの有ある夜の
夢に観音菩薩枕元に立て告て宣給ふは我を
つれて唐へ渡るへし国の王となすへしとあり夢覚
て見れは小仏の観音の像枕にあり疑ふことにあら
ねは其尊像を守りていつちともしらぬゐの筑紫方
より便船して終に唐土へ渡りけり其比唐土にある
国王の独り姫宮あり方〳〵ゟ太子を取迎へ給へ共此姫
君と契て命全き王なし後にはいかならぬ者にても
此姫君とちきりをこめ無恙き者には御位を譲らぬと
天下に触給へ共王位も命ありてこそとて望者更に
なし彼太郎又観音の告ありて其事を望むに
帝望むに任せ給ふ太郎姫君にまみゑてまつ勝木
に削たる男根をもつて陰門をこゝろみるに牙ありて
其木をかじる後には木にくたかれて牙落て常の陰門
となり夫ゟ契りあさからす太子も数多出来給ふとあり