翻刻
其後古郷床敷思召て帰国ありたき事を又観音に祈り
給ふに告ありて海辺に出給ふ所に大成亀来れるに海苔乗り
て又古郷我国の此小田中の里に帰国ありて爰に崩し
給ふ里人是を祭りて所の氏神にありめ上の岡に
社あり又五丁計山奥に守りの観音堂あり又其亀の
形を塚に筑て骸を納て今新王塚といへり近年此
塚を穿て田地にせんとて廻りの堀の半を崩すと
いへ共此塚に色々不思義有てやみしといへり則木曽殿
親王塚の前に陣取ありしと平家物語にあるは此塚の
事なり中比越後の謙信も木曽の吉例に任せて此亀
塚に陣取有し也
万代と限らしものを此塚の
ためし久しき名にそ有ける
又越中氷見灘の南村といふに奥しれぬ洞有
此親王塚へ通たると所にいへり其此洞より家具
をかしたる也貸し者悪敷事有て其後は
其事なしといへり惣して穴より家具抔貸
たるといふと所〳〵に云ひ伝へり案するに