翻刻
《割書:下にい|だす》を塩(しほ)の内(うち)へ灌(そゝ)ぎかけ烟(けふり)を升發(せうはつ)せしめこれを室(へや)の内(うち)に満(みた)しむ
るなり大抵(たいてい)室内(へや)の濶(ひろ)さ畳(たゝみ)四十枚(しぢうまい)ほども敷(しく)くらいなれば海塩の量(かさ)
七十八匁緑礬酸の量(かさ)六十五匁にて足れりとす室の大小に準(じやん)じ此割(このわり)にて
此品(このしな)を増減(ましへら)すべし二法(にほう)とも疫毒を制伏(せいふく)し傳染(てんせん)を防(ふせ)ぐの良法(りやうほう)な
りとはいへども人の性(しやう)によりて醋(す)の氣(き)を悪(にく)み龍脳(りうのう)の氣(き)を嫌(きら)ふことあり
て上にいたす法/行(おこな)い難(がた)きことあり又/下(しも)に出(いた)す法は人(ひと)其烟(そのけふり)に触(ふる)れば
忽(たちま)ち咽(むせ)びて咳嗽(せき)を發(はつ)し肺臓(はいぞう)に害(がい)あるゆへに此は疫熱にて死(し)せし人
の寝室(ねま)又は久(ひさ)しく人の住(すまい)せぬ空室(あきべや)などには行ふてよしといへとも人の
在(あ)る所(ところ)の居間(いま)寝室(ねや)等には用ひ難(かた)きことありこのゆへに左(さ)に出す法を
尤(もつと)もよしとす其法/細(こま)かなる砂(すな)を土鍋(どなべ)に入れ爐(ろ)にかけて温め水氣(みづけ)去(さる)
に至(いた)り別(べつ)に少(ちい)さき焼(やき)ものゝ猪口(ちよこ)を半分(はんぶん)ごろまで埋(うつ)め硝石(せうせき)【「シヤウエンセウ」左ルビ】の末四匁
ほど其(その)猪口に入(い)れすこし温め窓の戸を閉(と)ぢ其後(そのゝち)緑礬酸四匁ほど
を取りその硝石のうへに注(そゝ)ぎかけ硝子(びいどろ)の火箸(ひばし)にて頻(しき)りに攪動(かきまへ)し
《割書:金類(かねるい)の箸(はし)は|尤(もつと)も忌(い)むなり》烟氣(ゑんき)を發(はつ)せしむるなり此氣は疫毒を制伏するの効(しるし)著(いみ)じ