翻刻
これにて痘瘡なきところ 本邦(につほん)の内(うち)に今(いま)現(げん)にありまことに
此法は疫を防止(ほうし)する一大良法(いつちよきしかた)といふべし嗚呼(あゝ)疫熱の人を害(がへ)す
るは凶飢(きゝん)よりも甚(はな)はだし医(い)の疫熱を治(じ)するは抑(そも)そも末(すへ)なり願(ねが)は
くは其本(そのもと)を治(じ)せんとす余(よ)が此(この)避疫(ひゑき)の法(ほう)を述(のぶ)るも畢竟(ひつきょう)此(こゝ)に原(もと)づ
くなり
覇王塩(はわうゑん)製(せい)し法(かた)
○硫黄(いわう)硝石(せうせき)各(おの〳〵)等分(とうぶん)右(みぎ)何(いつ)れも細末(さいまつ)となしよく交(まじ)へ焼(やき)ものゝ壺(つぼ)に
火(ひ)を入(い)れ其内(そのうち)にこれを少(すこ)しつゝ匙(しやぢ)にすくひてふりかけ次第(しだい)々々( 〳〵 )に
此(かく)のごとくなして炎火(ほなふ)つきるに至(いた)りてその燃(もへ)たる滓(かす)をとり土鍋(どなべ)に
入(い)れ水(みづ)を加(くわ)へて徐(しづ)かに煎(に)て其滓(そのかす)のこらず水(みづ)にとけ水のうへに少(すこ)し
皮のはるよふになりたるとき火(ひ)より下(おろ)し細布(ぢのよきゝれ)にて濾(こ)しひやし
置(を)き塩(しほ)の塊(かた)まり器(うつは)の底(そこ)に凝(こ)り及びその器(うつは)の周圍(ぐるり)に附(つ)くものをと
り用(もち)ゆるなり此(これ)は即(すなは)ち覇王塩(はわうゑん)なり
石鹸(せきけん)の事(こと)