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翻刻
二一〇
見の叔父がこの寺の住職であつた関係でせう。又この寺にある山田
宗偏のさゝ波の琵琶は有名なものであります。
東観音寺 は二川町から一里近く南の小松原といふ村にあり、こ
の寺も行基の開創といふ言ひ伝へがあります。以前の寺地はそれか
らまだ十町程南にありまして大平洋に臨む処でしたが、宝永四年の
ツナミに懲りて移転したといひます。寺の縁起によりますと工事に
九年の歳月を費したとありまして、室町時代に田原の城主戸田氏が
信仰し、それに関した古文書も七八通保存されてゐます。
本尊は馬頭観音で、馬の守護神として遠近の信仰を集め、毎年二
月初午に絵馬を出しますが、これを厩にかけて無事を祈り、又馬の
病気にはこの境内の笹を喰せると癒ると信ぜられて居ます。外に安
阿弥の作と伝へる阿弥陀の座像がありまして、鎌倉時代の作、高さ
四尺六寸蓮弁上に安置され、昭和七年国宝の指定を受けました。又
文永八年在銘の懸仏は一尺一寸余の円板に馬頭観音像を取りつけて
あり、次の銘文があります。
三河国奉鋳小松原寺 馬頭観世音菩薩
当地頭藤原朝臣泰盛勧請 《割書:沙門行心行決|細工沙弥成仏》
文永八年《割書:太歳|辛未》正月十五日
更に境内の多宝塔も今国宝に指定されてゐますが、これは大永八
年に藤田左京亮定光が建立したもので、慶長十四年に修繕し享保元
年に移転し、又明治十三年手入れを行つてゐます。建築当初は檜皮
葺でしたが今は杮葺となつて居ります。其外鎌倉時代の作の広目増
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