Code4Lib JAPAN ✕ みんなで翻刻

コレクション: 愛知県豊橋市関連資料

東三河道中記 : 豊橋市及其附近案内 - 翻刻

東三河道中記 : 豊橋市及其附近案内 - ページ 96

ページ: 96

翻刻

ものでして、こヽにも安達盛長が建久の頃造營したといふ歴史があ り、今は古義眞言宗で全國でも指折りの寺です。數度の火災に寶物 も古文書も殆んどありませんが、此山中で每年夏の夜を鳴き明す靈 鳥佛法僧と、二月の末に行はれる田樂祭は有名なもので、雅俗共に 遠近から出掛る人々で相當の賑ひを見せてゐます。  何しろ徳川時代には千石の朱印地を持ち覇を鳴らした寺ではあり ますが、すつかり荒廢した現在ではむしろ風景として賞美されてゐ ると思ひます。  田口鐵道はこれから海老を經て田口に達して居りまして、その田  口に近い田峰には觀首【音の誤植】堂があります。 田峰觀音【ゴチック見出し】といひますのは文明の頃此地にゐた菅沼氏の建てたも のらしく、本尊は松芽觀音といひ、行基の作と傳へられますが大し たものではありません。前立の十一面觀音は創立頃のものでかへつ てこの方がよい出來です。本堂は明治になつてからの改築ですが蟇 股や組物などに古い部分が殘り、それは室町時代のものと見られて ゐます。軒にかヽる鐘は文明十三年在銘のもので實によい出來であ り、古いものとしては永祿十一年信景の制札があります。  此寺でも鳳來寺と同様、舊暦正月十七日の夜から朝にかけて田樂 が行はれ、歌詞も色々あつて郷土研究者の見逃せないものとなつて ゐます。  田口からは伊奈街道によつて長野縣に通じてゐますが、この方面  から發見される先史時代の遺物は悉く信州系統のもので豊橋附近【「近」は文字転倒】  の繩紋系遺跡はこれに聯絡するものと考へられます。從つて已に  有史以前東三河と南信州との間には交通が開け物資の交換が行は