← 前のページ
ページ 97 / 154
次のページ →
翻刻
れたものと見なければなりません。
郷土資料保存會【ゴチック見出し】は下津具村にありまして、此等の考古學的遺物
から古文書記錄民族資料まで約五千点を蒐集して居ります。これは
同地の夏目一平氏の業績で北設樂郡の鞍舟及び櫻平遺跡を研究し學
界へ發表したのも同氏であり、又土俗の研究にも精進され、學界名
氏の北設樂行きは氏を訪問する事が目的となつてゐる程です。
此方面は以上で終りまして、次は鳳來寺鐵道の鳳來寺口驛から先
を申上げます。次の湯谷驛には鑛泉があり、ホテルを經營してゐ
ますが、傍を流れる豊川の上流三輪川の風景が實によく鳳來峽と
て世間に可成り知られてゐます。
馬背岩【ゴチック見出し】は驛より少し下流の河心にありまして、今天然紀念物
に指定されて居ます。この馬の背のやうな岩には中央に二尺巾位の
違つた石が縱走して居ますが、これは古い岩の弱点へ新たに異つた
岩漿が噴出したものださうで、その一端が一つの池となり名號池と
いつて居ます。傳説ではこの上流一里許りの對岸に名號村といふが
あり、昔弘法大師が廻國の際その村に泊つて名を聞かれましたが、
まだ名前がなかつたので命名を乞ふと明朝迄に考へて置くといはれ
ました所が翌朝大師は昨夜の約束を忘れて出立されたので、村の者
が追かけて河向ふを行かれる大師を見つけ、大聲でその事を賴むと
何と思つたのか紙へ南無阿彌陀佛と書いて示されました。それが河
の中の石に寫つていつまでも消えなかつたので、その村を名號村と
名づけ、池を名號池といふやうになつたといふのです。
成程この名號池の石面には、字とも繪ともつかない妙な模樣が五
六個ありまして、自然に出來たものでせうが、見て居ると神秘的な