翻刻
【右丁】
少し入れ又酢(す)を少々入てまた文武火にて寛(ゆる)々半日ばかり
煮るなり前後(せんこ)凡一日ばかり煮るなり《割書:但し|》右の酢を入ること
誠(まこと)に極秘事(こくひじ)なり左すれば其/骨(ほね)すこしも歯(は)にこたへず
真(まこと)に麩(ふ)を喫(くふ)と同やうになるなり
○肴(さかな)を寒水(かんすい)に漬(つけ)る塩加減(しほかげん)の法
魚(うを)鳥(とり)菜(な)菓(くだもの)何にても寒水(かんすい)につけ置とき其/塩(しほ)かげん
等一なり其方(そのはう)は鶏卵(たまこ)を壱つ其寒水の中(うち)へ入るに底(そこ)に
沈(しづ)むものなり其/側(かたはら)より塩を漸々(せん〳〵)に入れは加減(かけん)よくなり
たるとき其/卵(たまご)おのづから浮(うき)あがるものなり是(これ)を度(と)とし塩を
【左丁】
とゞめ其水に漬(つけ)おくなり精進(せうしん)の物は一両年も保(たも)つべし
魚鳥(うをとり)の類は月を経(へ)るくらゐは保つなり
○諸魚類(しよきよるい)骨(ほね)まで和(やは)らかに煮る法
山楂子(さんさし) 壱味
右十/粒(りう)はかり魚(うを)を煮(に)る鍋(なべ)へ入/一所(いつしよ)に煮るときはいかやうの
魚(うを)にても和(やは)らかになる事妙なり又此山楂子は魚毒(きよどく)を
解(け)す功能(こうのう)あり
○煮〆(にぬき)鶏卵(たまこ)の心得
たまこを煮(に)ぬきするに黄身(きみ)一方へ片(かた)よりて見くるしまづ